三城×幸田・お礼用SS
(クリスマスの三城)



恭一に女装をさせようと思ったのは、何故だったか。

たぶんいつもと同じくその端正な顔を見ていたら、「もし女だったら」と思ってしまったのだろう。

別に「恭一が女だったら」などと思ったわけじゃない。

男であるが故のその身体も、言動も行動も全てに満足している。

ただほんの少しだけ、そう「女の装いをした恭一」を見たかっただけなのだ。

そこで数ヶ月前に再会し、(詳しくは聞いていなかったが)メイクや美容関係をしていると聞いていた椎名に連絡を取ったのだ。

椎名の言葉遣いからしていわゆる「お姉」だったのだが、やはり幸田との関係を打ち明けるのは相当の勇気を要した。

そういった人種が全てゲイである確証などないからだ。

だが一たび打ち明けてみるとなんて事はない。

驚きはされたが、「私もそうだから大丈夫」となんとも心強い言葉を貰った。

それから二人であれやこれやと用意に紛争し、クリスマスの当日を迎えたのだ。

客室に恭一一人で行かせたにはあまり意味はない。

俺が居るよりもスムーズに事が運ぶだろうとは思ったがそれだけだ。

数分置いて部屋に入った俺は、恭一のあまりの可愛さに声が出なかった。

どこぞの令嬢かと思わせるほどに優美で上品で、その上知性さえも漂う。

人は「惚れた欲目」と言うだろうが、俺は心から誰に会わせても恥じる事はないだろうと思った。

その時借りた部屋は、謝礼金と合わせて椎名に渡した。

奴もまた彼氏とでも泊まるのだろう。

嬉しそうに「助かる」と言われたのだ。

恭一は本当に可愛かった。

これほどまでに自慢したいと思った恋人など居ないと、俺はどうだとばかりに歩いた。

だがそれは想像以上に人目を惹いてしまったのだ。

そして恭一は何も気づいていない。

照れたように笑む顔も、安心しきった笑みも、喋らない慎ましやかな所も、全てが人を惹き付けてやまないというのに。

自慢したいとばかり思っていたが、いざそうなると随分と嫌なものだった。

恭一は俺のもので、俺にだけ微笑めばいいのだ。

段々と機嫌の悪くなる俺を前に、何を思ったのか恭一は涙を浮かべた。

そんな顔をされて、俺が我慢出来ると思っているのだろうか。

いや、思っているのだろう。

百歩譲って俺はいい。

だが他の奴にも要らぬ気を誘ったらどうするつもりだ。

自分の容姿に何も頓着をしない恭一は正に「小悪魔」そのもので、俺を何処までも振り回す。

そして、それに甘んじて「しかたない」と思っているのも事実だ。

恭一ならば男でも女でも関係なく愛せると思ってはいたし、今でもその思いは変わらないが、今日ほど恭一が男で(まだ)良かったと思った日はない。



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