近藤×琥珀・お礼用S・S
(眼帯)


近藤と琥珀が共に暮らし始めて間もなくの頃。

「おかえりなさい、彰さん」

近藤の帰宅を聞きつけた琥珀は、キッチンから足を引き摺りながらも大急ぎで玄関に駆けつける。

嬉しそうに笑みを浮かべ料理の為につけていたエプロンを取る様は、正に新婚家庭の若奥様だ。

「ただいま」

靴を脱いだ近藤は長身をかがめると琥珀の額にキスをする。

その顔もまた、普段の屈強ぶりが嘘のように破顔していた。

リビングへ向かいながら、手にした大振りの紙袋を琥珀へ渡す。

初孫を喜ぶ祖父母、とでも言おうか、近藤は飽きもせず毎日毎日何かしらのプレゼントを持って帰って来るのだ。

その大抵が衣服類で有るが為に、琥珀専用の大型のクローゼットは今やパンパンになっている。

そしてそのどれもこれもが有名なブランド品ばかりだった。

今まで誰かに何かを与えられる事の少なかった琥珀は、喜びよりも困惑が強く、こちらも毎日オロオロとしながら受け取っていた。

「昨日も貰いました、、、毎日、申し訳ないです」

暗い声で俯いてみせる琥珀を近藤はそっと抱きしめる。

「いいんだ、俺がしたくてしている事だろ?それとも迷惑か?」

「迷惑なんて!ただ、申し訳なくて」

ガバリと顔を上げた琥珀は、ブンブンと首を振りながら、眉を下げる。

情けなくも映るその顔もまた、近藤は好きだった。

「だったら、礼を貰おう。」

「礼、ですか?僕に渡せるものなんて」

「左目、見せてくれ」

「、、、。」

琥珀は息を飲んだように言葉を詰らせ、近藤から顔を逸らした。

近藤と暮らすようになり、「何でも欲しいものは買え」と言われた琥珀が唯一望んだ物が、今も身につけている眼帯だった。

何の変哲も無い、どこの薬局でも売っているような医療用の物だ。

「気持ち悪いだけです」

自分の飛び跳ねた左目が、好奇と嫌悪の目線で見られている事を知っている。

琥珀は無意識に眼帯の上から瞳を押さえた。

どんなに意識をしても中央に寄る事の無い瞳。

生まれつき光の宿らなかった瞳。

「気持ち悪い訳があるか。俺はこの瞳も、身体も、心も、琥珀のなにもかもが好きなんだよ」

近藤の声が、琥珀の耳元で甘く囁かれる。

「、、、、」

逡巡した琥珀は、暫くしてそっと眼帯を外した。

現れた瞼は、右目よりも少し閉じ、瞳は左上へと偏っている。

右目は純粋なまでに真摯に近藤へと注がれていた。

「愛している」

近藤はそう囁くと琥珀の瞼の上に唇を落とし、抱きしめる腕に優しく力を込めた。
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