近藤×琥珀・お礼用S・S
(バレンタイン・3)


14日から15日に日付が変わり2時間が経った頃、近藤はようやく帰宅の路についていた。

この時間帯の帰宅は特別珍しいものではない。

近藤が統括する組の関係の店、スナックやキャバクラに顔を出しているとそんなものだ。

以前なら午前様も当たり前だったが、近頃はめっきりとなくなった。

それは誰あろう琥珀が家で待っているからだ。

琥珀は「寝てろ」と言っても起きて待っているような子だから、余計に遅くなりたくはない。

近藤はポケットから携帯を取り出すと、目を擦りながらも起きているであろう琥珀に「帰るコール」をしたのだった。


************************

琥珀の携帯が鳴ってからきっかり10分後、近藤は玄関に立っていた。

舎弟が扉を開き、中に入る。

「お疲れ様でした」

近藤を送り届けた舎弟は深夜の為押さえた声で一礼をし、大きな紙袋を置いて出て行った。

「お帰りなさい」

入れ替わるように、足を引き摺りながら琥珀が玄関に現れた。

パジャマ姿で眠そうな顔をしているが眠っていた様子はなく、文句の一つも言わずに微笑んでいる。

近藤はそんな琥珀が愛しくてたまらない。

「遅くなって悪かったな。」

「いえ、お仕事なら仕方が無いです」

だがその仕事が、キャバクラに行く事だと思えば胸を張れない。

「どうしたんですか、これ」

曖昧な返事を返す近藤を気にせず、琥珀は舎弟が置いて行った紙袋を見た。

中には色取り取りのパッケージに包まれた小包が入ってる。

そのどれもが有名店・高級店であるのだが、残念ながら近藤にも琥珀にも無価値に近い。

「あぁ、今日はバレンタインらしくて、色んな所から呼び出しがあってな。5件、6件ほど店を回ったかな。」

近藤はスーツのジャケットを脱ぎながら、何でもない口調で話す。

そのジャケットを受け取りハンガーに吊るすのは琥珀の役目だ。

「そ、そうなんですが」

「バレンタインなんて忘れていた。こんなにチョコレートばっかり貰ってもなぁ」

中には他の物も入っているだろうが、それを確かめる事も面倒だ。

「あ、、、」

「ん?、、、、あ」

ネクタイも緩めた近藤がリビングに入ると、物の少ない部屋の中で存在感を放つローテーブルの上に、綺麗にラッピングされた小さな小箱を見つけた。

磨き上げられたガラス製のローテーブルにはそれしかなく、いかにも特別な物のように思える。

「な、何でもない、です」

琥珀は足を引き摺りながらそれに歩み寄ろうとしたが、近藤は琥珀より早くにそこに行き、小箱を取り上げた。

「琥珀、これ?」

「なんでも、ないです。あの、気にしないでください」

だが、目線に上げた小箱に『彰さんへ』と書かれたタグを見つければ、「何でもない」と思えるわけがない。

近藤は驚きに目を見張りながら琥珀を見つめた。

「これ、俺にか?」

名前が書いてあるので他に考えれないのだろうが、近藤は聞かずにいられなかった。

「あ、はい、でも、もういいんです。」

琥珀は苦手な背伸びをして近藤から箱を奪い返そうとしたが、圧倒的な身長差ではそれも叶わない。

近藤は今しがたの自分の発言に後悔しつつ、破顔の笑みを浮かべ、箱を持たない片手で琥珀を強く抱きしめた。

「ありがとう、嬉しい。まさか琥珀が用意してくれていたなんてな。」

「でも、チョコレートばっかり、要りませんよね」

琥珀は決して嫌味を言っている訳でも、拗ねている訳でもない。

ただ、「そう思った」のだ。

「そんな訳あるか。琥珀が用意してくれた物が嬉しいんだ。他の物は明日誰かにやるつもりだから気にするな。」

「迷惑じゃ、ないですか?」

「当たり前だろ?」

近藤は嬉しくて堪らなかった。

そして、続けられた言葉を聞くと、更に感涙するのだった。

「手作り、なんです。食べてくれますか?」






だが、チョコレートよりも先に食べられたのは琥珀だった。らしい。

+目次+