三城×幸田・お礼用S・S
(葬儀)



───カーン


辺りに線香の臭いが立ち込め、出棺を知らせる鐘が鳴らされる。

しめやかに執り行われた葬儀に参列する者は少なかった。

まばらに集まる人の中、少し離れたガラス張りの壁際に立った幸田は、棺が納められた大きなエレベーターのような窯を見つめていた。

その中では想像も出来ないほどの業火が彼を焼くのだろう。

「どうか、安らかに」

自分でも聞きとりにくいほどに小さな呟きだったというのに、それを耳にしたのか三城が幸田の肩に触れた。

肩に置かれた大きな手に力を込められ、三城の存在をリアルに感じられる。

見慣れない真っ黒のスーツ姿の三城は、幸田の目にいつも以上に凛々しく映っており、すましたその面持ちを眺めていると、何故か涙腺が熱くなった。

「どうした?」

目を眇める幸田に、三城が怪訝そうに尋ねる。

「いえ、、、解らないです」

本当に、何故自分が泣きそうなのか、彼の死を悔んでいるからか、すら解らなかった。

ただ、5年近くの思い出が一気に流れ込んで来て、涙が出そうになる。

今思い返せば彼は自分を嫌っていた訳ではない気がるすのだ。

根拠はないが、嫌味な言葉はあれど嫌悪はなかった気がする。

上手く説明の出来ない、切ない気持ちが幸田の頬に涙を流した。

「どうか、安らかに」

「きっと想いは届く。天国に・・・」

同じ言葉を繰り返した幸田に、三城は至極優しい笑みを浮かべ窓の外を見上げた。

つられるようにそちらを見た幸田の目に入って来たのは、どこまでも澄み切った青い大空だった。



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