三城×幸田・お礼用S・S・100のお題に挑戦!
(4・貴方の虜)


会社ビルの地下駐車場に止めている愛車に、三城は帰宅の為乗り込んだ。

役員・重役やそれに順ずる者達専用のそのスペースを、当然のように三城も与えられていた。

今日も幸田が待っているであろう自宅に向け、車を滑らせる。

時刻は深夜前だったが、夕食のタイミングを逃してしまい何も食べていない。

コンビニで購入するなり深夜営業の飲食店に寄るのもよいのだが・・・

「家庭的な物が食べたい。」

肉ジャガとか焼き魚とか。

一人暮らしの長い三城は、外食やレトルト・インスタントの食事に慣れている。

今まで仕事が最優先と生きてきたのだ。

その為なら食事時間を削るのも厭わないし、結果腹を満たせれば何でもよかった。

だというのに、幸田が家に来るようになって数ヶ月、その手料理に見事に魅了されてしまいレトルトに嫌気がさした。

とはいえ他に食べる物がなければそれらの物を食べなければならないのが現状なのだが。

ある意味、食に拘りは余り無い(好みは煩い)三城なのだが、今日はやけに「日本の家庭料理」と言うべき物が食べたかった。

「どうするか。」

帰宅すれば幸田は帰っているだろうか。

幸田もその日によって違い、食事を済ませて来る日もあれば帰ってから三城宅で作る日もあった。

作る日は事前に連絡がある事が多く、そして今日の連絡は無い。

テスト期間がどうの、と言いここ数日忙しくしていたので済ませて来るのだろう。

三城は一人外食をする気にはなれず、空腹のまま帰路についたのだった。



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「ただいま・・・」

鍵の掛かっていない扉を開け玄関に入る。

三城の帰宅を予測した幸田が開けっぱなしにしていたのだろう。

一歩中に入ると、気のせいとは思えない良い香りが漂ってきた。

まさか、と三城の足は速くなる。

「恭一?」

三城はリビング手前にあるキッチンに顔を覗かせた。

中には予想通り、ネクタイを取ったワイシャツ姿にエプロンを付けた幸田が菜箸を握っている。

「あ、お帰りなさい。」

振り返りながらフワリとした笑顔を向けられると、一日の疲れが飛んで無くなるようだ。

「三城さん、夕飯食べましたか?」

「いや、今日はまだだ。これは?」

「やっぱり。そんな気がしたんです。」

幸田の何気ない呟きに、三城は胸を射抜かれたように甘く苦しくなった。

「それに、何だか急に食べたくなっちゃって。肉じゃがと鮭の塩焼きです。本当は秋刀魚が良かったんですけど、もう無いみたいで。」

これは何かのご褒美か。

サプライズの夕食はメニューまで三城の希望通りで、気を抜けば頬が緩みきってしまいそうだ。

三城は後ろから幸田を抱きしめた。

「恭一。」

「わっ三城さん。何ですか?」

「お前は最高だ。」

三城は幸田の首筋に顔を埋め、幸せな一時に浸るように瞼を閉じた。

そして決意したのだ。

──コイツは俺の嫁だ──と。

「は?あ、ありがとうございます。」

だがこの時の幸田は、訳も解らないと目を白黒させるばかりだった。



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