三城×幸田・お礼用S・S・100のお題に挑戦!
(6・アフター5)


「幸田先生、たまには飲みに行きましょうよ。」

ある日の就業間際、三枝が幸田の背中に寄りかかるようにしながら言った。

「明日幸田先生は休みでしょ?行きましょうよ。ここ連日に比べたらまだ早い時間だし、いくら忙しい時期だからって、息抜きも必要ですよ。」

「でも・・・」

確かに、最終の授業の一つ前で二人とも講義を終えているため時間は早い。

そして残っている仕事も家でやった方が効率がいいものばかりでもある。

ついでにもう一つ加えるならば、今三城は出張で日本には居ない。

同僚と飲みに行くのにこれほど条件がそろった日も珍しいくらいだった。

「三枝先生はいいんですか?湯沢先生に何か頼まれているようでしたけど。」

「あぁ、あれは大丈夫です。幸田先生はお気になさらず。それより、良い感じの居酒屋見つけたんですよ。幸田先生は魚介類とか好きですか?」

「・・・好きですけど。」

元々は肉より魚が好きなのだが、どちらかと言えば肉食の三城に合わせて肉系統の料理をする事が増えていた。

最後に魚、それも焼きや煮でない物を食べたのはいつの事だろうか。

「じゃぁ決まり。さ、さ、行きましょう。」

「ちょっ、待ってくださいって!」

僅かな気の許しに漬け込まれた幸田は、引きづられるように職員室を後にしたのだった。


*********

「──確かに美味しいです。」

目の前に並べられた新鮮な造りや魚介類を使った創作料理に舌鼓を打ちながら、幸田は満面の笑みを浮かべた。

「でしょ、でしょ。この焼酎もなかなかですよ。えっと・・・鹿児島産のやつですって。」

「へ〜」

酒に強くも詳しくもなかったが、これは旨いと感じる。

三枝と二人で飲む事に対し、三城へ罪悪感が無かったと言えば嘘になるが、これほどの物を並べられればその意識も薄らいでしまっていた。

「いつか幸田先生を連れてこようって思ってたんですよ。なのに最近全然遊んでくれなくて。」

「そういう事は彼女にでも言ってください。」

「いませんよ、そんな人。」

「三枝先生ならすぐ作れるでしょ?」

三枝はラテン系の顔立ちで見るからに軽そうな雰囲気を持ってはいたが、男から見ても二枚目の部類に入る事は間違いなかった。

そしてその印象と反し、職業は教師とくれば大範囲の女性に好意を寄せられそうだ。

「そりゃぁ誰でもいいなら出来るでしょうけど。恋人ってそんなものじゃないでしょ?」

「・・・確かにそうですね。」

普段軽い言動行動が目立つ三枝の、仕事以外での真面目な一面に幸田は驚き、失礼と思いながらもクスリと笑ってしまった。

幸いな事に、それに対し三枝は気にした様子もない。

「いいなぁ、幸田先生はラブラブな恋人が居て。」

「ラブラブって程じゃ・・」

とは言いながらも、思い返した自分達の生活は確かにラブラブという言葉は当てはまる。

だがそれを認めるのはなんとも気恥ずかしかった。

「彼女さん、ご飯作ってくれたり掃除してくれたりするんですか?」

「え、えっと、まぁ」

「いいなぁ。エプロン姿とか可愛いんだろなぁ。」

食事を作るのも掃除をするのも、エプロン姿が可愛いと言われるのも全部自分なのだが、そんな事を言えるはずもない。

脳裏に『恭一は可愛いな』という三城の囁きが聞こえて来た気すらする。

これは三城以外の男と二人きりな事に対する罰だろうか。

幸田は居た堪れなさから張り付いた笑みを浮かべ、早く話題が変わる事を願ったのだった。



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