三城×幸田・お礼用SS
(ワシントン空港)



日本人にしては高い身長とスラリと伸びた手足は、この地に居たとしても当然のように人の目を惹きつけている。

ワシントン空港のラウンジで、三城は一人ミニノートを開いていた。

座り心地の良いソファーに深く腰掛け、足を組んで片手にコーヒーの入った紙カップを持つ姿は、何処から見ても「出来る男」そのものだ。

一緒に出張をしている、秘書のように使っている部下の男は現在側には居なかった。

いつもならば少しの時間も惜しんで仕事をしているのだが、今はそんな気分にはなれそうにない。

後数分で飛行機に乗り込むが、日本に着くのは十数時間後。

帰ったとしてもその晩は幸田に会う事は出来ない。

寒い部屋で一人眠る、それだけだ。

一人暮らしは大学進学と同時に始めているし、誰も待っていない部屋なんて特別な物じゃないはずだった。

数ヶ月前までは。

メールボックスを開き、もう何度も読んだ幸田からのメールを再び読み直す。

なんて事の無い、毎日大して変わる事の無い些細な文章。

それでもそれがどれほど三城の支えになっているか、幸田は知っているのだろうか。

プライドだけで我武者羅にやってきた。

限界なんて無いと思っていた。

けれどその限界が見えた時、幸田の存在の大きさを目の当たりにしたのだ。

──カチッ

デスクトップに置かれたアイコンの一つ。

クリック一つで小さく表示される幸田の写真を呼び出すと、三城は小さく呟いた。

「早く、会わせろ──」

異国の地でその日本語は、誰の耳にも届く事は無かった。



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