三城×幸田・お礼用SS
(面接に行く前に)



大石に推薦のお願いをした次ぎの日、「面接明日大丈夫?」と連絡が来た。

つまり、今日だ。

幸田は一人、三城の寝室にある自分専用のクローゼットの前で腕を組み首を捻っていた。

人間は見た目でない、とは言っても第一印象はどうしたって見た目だ。

何を着て行くかによって、それは大いに変わるだろう。

「まず、いらぬ誤解を生むだろうから指輪は外す、だろ。」

幸田は独り言を呟きながら、左手の薬指に填っているプラチナリングを引き抜いた。

ベッドサイドのサイドボードの上にコトリと置く。

「身に余る物は逆に印象を悪くするから、これも外す・・・ごめんなさい、三城さん。」

今は居ない三城に心の中で両手を合わせて謝罪をすると、幸田は腕に嵌められた時計も外した。

「いつでもつけていられるように」と渡されたそれも、幸田にとっては「いつでも」といかないのが現状だ。

なぜならそれは、一般的な会社員の手が出せる物ではないからだ。

同僚達には「偽物ですよ」と言ってなんとか誤魔化したが、誰もがそれで納得してくれるとも思えない。

サイドボードの上、指輪の隣にそれも丁寧に置く。

「スーツは、、、パッと見て価値が解る人がどれくらいか居るんだろう・・・」

クローゼットに掛けられているスーツの7割は、幸田が知らない間に増えていた三城が買って来た高級スーツ。

残り3割は幸田が自宅から着て来てそのまま置いてある量販店のスーツ。

高級スーツと言っても、三城の買ってくるそれは桁が違っていた。

いくら三城は常日頃から同じ様な、いやきっともっと高い物を着ているとはいえ、幸田にはそんなものを普段に着る勇気は出ない。

汚したら、破いてしまったら、どうしよう。

そう思うとつい袖を通さなくなってしまっていたのだが、先日三城にそれを知られてしまい怒られたのだ。

「三城さんの買ってくれる物は、ちょっと・・・日常的じゃ、ないからな・・・ハァ」

幸田は一着のスーツを胸に抱いて、盛大なため息を吐いたのだった。



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