三城×幸田・お礼用SS
(面接に行こう)



大石の勤める高校は、三城の家から(と数えるのも少し首を傾げる物があるのだが)電車を三本乗り継いだ所にある。

現在勤めている予備校よりは(三城の家からも自宅からも)遠くはなるが、苦にはならないだろうと体感した。

都内とはいえ、緑の多い場所だ。

中途半端な時間帯とあり大きな街ではないこの駅で乗り降りする人は少なく、ガラガラの車内、他に人の居ない扉から幸田は一人ホームへと出た。

後ろで扉が閉まる音が聞こえ、電車が走り去ってゆく。

この駅に来たのはもちろん初めてだ。

それなりに賑わいを見せる極ありふれた雰囲気の駅で、隣接する商業ビルも二つ見える。

ここに来るのが今日が最初で最後にならない事を祈りながら、幸田は深く深呼吸をした。

「急がないと。」

自分自身に気合を込めて呟き、幸田は階段を下って、改札階に出る。

事前に聞いていた改札に向かうと、そこには大石が元気そのものの明るい顔をして立っていた。

「おい、こっちだ。」

「わざわざすみません。」

「なんてことねーよ。今はちょうど授業がないんだ。」

とは言え、忙しい授業の間を縫って来てくれたはずだ。

雑務などはあり暇な訳はないだろう。

何から何まで、という言葉が幸田の脳裏をよぎり、感謝の気持ちが溢れてくる。

「ありがとう、ございます」

幸田がニコリと微笑んで見せると、大石が照れたように頭を掻いた。

そんな大石の素朴な所が、幸田は昔から好きだった。

そこから徒歩で数分。

平坦な道を、二人は黙って歩いて行った。



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