三城×幸田・お礼用SS
(秋人の悩み・2)



見合い結婚などに興味はない。

そもそも、結婚そのものにも至極興味が持てない。

だからこそ30歳を過ぎても一人身なのだが、周囲はそんな自分を放って置いてはくれないようだ。

義務教育を終えた頃から放任主義となった両親はともかく、おせっかいな親戚達は暇を十分に使っては度々こうして秋人や春海の所に縁談を持って来た。

今までは仕事やなんだと理由をつけて春海に押し付けたり、断り切れなかったものは会うだけ会って翌日には断りを入れていた。

だが春海は両親に幸田との一生を約束した為、今後その被害に会うのは秋人ただ一人という事になる。

今回見合いを受ければ、この先もそれは続いていくだろう。

「恋人さえ紹介してくれれば、見合いを断っていい」と沙耶子は言ったものの、両親に紹介出来るような存在は居ない。

それどころか、ここ数年を振り返り未来を考えても、暫くはそんな機会に恵まれるとは思いがたかった。

「・・・どうするべきか。」

内心の呟きが、無意識のうちにため息と共に唇から漏れる。

珍しく己の世界に入ってしまっていた秋人に、バーカウンターを挟んだ正面に居る青年が、ニコニコと笑みを浮かべながら声をかけた。

「秋人さん、どーしたの?」

此処はFall Dominion。

秋人は現在カウンター内に居る。

つまり、趣味だと言い張ってはいるがれっきとした仕事中だった。

「いえ。少し呆けてしまっていたようです。申し訳ありません。」

秋人はすかさず営業スマイルを浮かべると、青年に顔を近づけ、耳元で囁いた。

甘く、低く。

その効果の程は、誰あろう秋人自身が一番理解している。

「貴方しか気がついていないようです。内緒にしておいて頂けますか?」

「っ・・う、うん。」

秋人が離れると、青年は真っ赤になり俯いた。

この青年が秋人に好意があることなど、以前より周知の事実だ。

(適当な奴を恋人と偽っても構わないが・・・・)

ちょうど、この青年など──

脳裏を過ぎった思想を、秋人は小さく首を振って否定した。

それを同性とする事は、春海と恭一の想いを愚弄するかのようで躊躇われる。

かと言って、女はいろいろと面倒だ。

では偽るのではなく、本当に恋人を作ってしまえばどうだろう。

付き合ってから情愛と恋心が芽生えるパターンもありではないだろうか。

確かに無いとは言いがたいが、とりあえずの所──

(少なくとも、こいつはないな。)

秋人の心情など知らぬ青年は、照れた笑みを浮かべてニューボトルを降ろしていたのであった。



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