三城×幸田・お礼用S・S
(浩二との別れ)



その日は珍しく「話がある」と浩二に呼び出された。

いつもなら食事か軽くアルコールを飲むか、店に一軒入りすぐにどちらかの家に行っていた。

それなのにその日は食事をした後に居酒屋で飲み、更にいわゆる「ハッテンバ」と呼ばれるその手のバーにも行った。

別に僕達は互いというパートナーが居るから新しい出会いを求めたい訳ではないのだけれど、恋人同士の話をするのに普通の店では人目があったからだろう。

「どうしたの?話って何?」

普通の水割りを今までの店で数杯飲み、この店で薄い水割りを一杯頼みグラスが半分ほどになった頃、浩二はようやく唇を開いた。

他愛の無い世間話ではない、とはっきり解る重々しい口調だ。

「結婚、しようと思うんだ」

その言葉はどこか遠くで他人事のように聞こえた。

「、、、え?」

「俺ももう29だろ。来年30だ。そろそろ身を固めないと周りに怪しまれる。丁度見合いの話しも来てて好条件なんだ。向こうも乗り気でさ。」

「、、、そう、か。」

その事自体のショックは不思議と無かった。

いづれはこんな終わりを迎えると思っていたのかも知れない。

それよりも続けられた言葉に、瞬時に激しい怒りを覚えた。

「でも、お前との関係は終わらせたくないんだ」

「っ!ふざけるな!」

頭が沸騰するとはこういった事なのだろうか。

浩二がどういった意図でその言葉を放ったかなど、冷静に問いただす事も出来ず、僕は一言大きく怒鳴ると席を立っていた。



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