三城×幸田・お礼用S・S
(ボーナス)



鞄に入れた現金入りの封筒が、今日は一段と重い。

実際には体感として解るほどの重さではないのだが、中身を思うと鞄を握る手の平にいつもと違う感覚を覚えるのだ。

今日は年に二度あるボーナス日。

特別物欲が強い訳ではない幸田であっても、やはりこの日は嬉しい。

だたそれだけでウキウキと弾む気持ちで、今日もまた阿佐ヶ谷の自宅ではなく麻布の三城の家へと帰るのだった。

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「ただいま帰りましたー」

三城が帰宅していると知り、幸田は機嫌良さそうな声を張り上げた。

扉に鍵を閉め靴を脱いでいると、カチャリと仕切り扉が開く音がし、ワイシャツにスラックス姿の三城が姿を表した。

ネクタイは外されワイシャツのボタンは上から数個開けられている。

やや疲れた表情も伴って、妙な色気が漂っていた。

そんな三城を見上げた幸田は、知らずに頬を赤らめてしまう。

「どうした、恭一?」

「いえ、何も。」

見惚れていました、なんて恥ずかしくて言えない。

慌てて首を振る幸田に、三城は柔らかく微笑んだ。

「そうか?」

そんな幸田の心情を知ってか知らずか、三城は幸田の肩を掴むと自分の胸へと引き寄せ軽く抱きしめる。

甘いフレグランスの香りが幸田の鼻腔をくすぐり、暖かい安らぎを感じた。

ホッと息を吐いたのが三城に伝わったのか、初めは背中をポンポンと叩くようなスキンシップだったのモノが、幸田がじっとしているのをいい事に、悪戯に薄い耳たぶを甘噛みされてしまった。

唇の熱と僅かな痛みが、甘美な痺れとなって全身を駆け巡る。

「んっ・・」

上擦った声が漏れると三城はクスクスと笑い、幸田が抗議する前に離れていった。

「悪い、つい。それより機嫌が良さそうに見えたが、良い事でもあったのか?」

さも何事も無かったかのように口調を変えた三城は、自然な仕草で幸田の鞄を持つと先に立ってリビングへと歩いて行く。

「つい、何なのだ。」と思いもしたが、元々深くはなかった三城への憤りなど、今日の日を思い出すと同時に綺麗に消えてなくなってしまっている。

毎度ながら幸田は、三城に関しては単純な思考が優先される場合が多い。

ダイニングテーブルに幸田の鞄を置きソファーに向かった三城を視線で追い、ジャケットを脱ぎながら幸田は嬉しげに頬を綻ばせた。

「良い事、っていうか、今日はボーナスの支給日だったんです。」

「へぇ、ボーナスね。」

「えぇ。僕のところもやっぱりかなり減っていましたけど嬉しいです。・・そりゃぁ、僕のボーナスなんて三城さんの月給にも及ばないと思いますけどね。」

自嘲めいた言葉は、はしゃいでしまった自分に対する単なる照れ隠しだ。

「三城さんは凄そうですよね。100万・・・200万くらい有ったりして?」

クスクスと笑い冗談まじりに言いながら、三城の隣の定位置に腰を落とした。

三城はそんな幸田の肩をすかさず抱き寄せる。

「そんな物はない。」

「またまた・・・」

「いや、本当に無いんだ。うちは外資だからな。夏季・冬季のボーナスは日本独特のモノだ。」

「そうなんですか?」

されるがまま三城の胸に背中・・・というよりも頭を預け、もたれかかる恰好になった幸田は真上にある端整な顔を見上げた。

「あぁ。収益がよければ年末や年度末にボーナスが有る場合もあるが、ここ数年は寂しいものだ。」

柔らかく微笑みを浮かべ続ける三城は、幸田の顎を猫にするようにゴロゴロと撫でた。

幸田に「機嫌が良さそうだ」と言った三城もまた、そんな幸田に負けないほど上機嫌に思われる。

「へぇ、無いんですね。そうだ!じゃぁ、たまには僕に何かご馳走させてください。」

良い事を思いついたとばかりに、幸田は満面の笑みを浮かべた。

片手を上へと伸ばすと、三城の頬に触れる。

一瞬、三城が目を眇めた事に幸田は気づかなかった。

「ご馳走?」

「はい。いっつも三城さんが出してくれるから。僕だってたまには・・ね?」

「楽しみにしてるよ。だが、今はそれよりお前を味わせてくれ。」

「待って・・どうしてそうなるっん・・・くっ・・」

目を細めて微笑む幸田に、三城は我慢できないとばかりに急激な動作で唇に唇を重ねた。

身体を弄られながら舌を絡めさせ貪るようなキスに、幸田は何故こうなったのか理解出来ないままなのであった。


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