三城×幸田・お礼用S・S
(苦手な食べ物)



三城春海は困っていた。

今日も三城の自宅キッチンでは新妻よろしく幸田がエプロンをつけて夕食の準備をしているのだが、先ほどチラリと覗いて見るとどうやら今夜のメニューは酢豚らしい。

三城はあまりそれが好きではなかった。

肉が甘いというのがなんとも我慢がならない、というのが理由なのだが、今更になってそれをどう伝えていいのか解らないでいた。

メインディッシュのそれを「いらない」と言えば他に食べる物が無く、確かにインスタント食品の買い置きはあるが、幸田の目の前でそんな物を食べるなどできない。

何も食べないという選択肢も、幸田が三城に付き合い「自分も食べない」と言うだろうと容易に想像できる故に不可能だ。

そのうえ今回無理をして食せば、三城が酢豚を嫌いだと知らない幸田はまた作るだろう。

それは困る。

だがほぼ完成している物を食べられないと言えば幸田は悲しむだろう。

それはもっと困る。

三城が答えの出ない悶々とした堂々巡りの中に居る間に、着実に料理の腕を上げていっている幸田の酢豚は無事完成したようだ。

キッチンからダイニングテーブルに料理を並べてゆき、ソファーに座りながら読みもしていない新聞を手にしていた三城に機嫌の良さそうな声をかける。

「三城さんご飯出来ましたよ」

「あ、あぁ今行く。」

完全にタイミングを逃してしまった。

こうなっては無理をしてでも無理を悟られないように食さなければならない。

「美味しく出来ているといいんですけど。」

いただきますに次いで独り言のように呟く幸田に、三城は一口食すと笑みを向けた。

「いつも通り上手い。」

「良かった。」

「・・・」

幸田があまりに嬉しそうに微笑むから。

もうなんだっていいやと思ってしまう三城なのだった。



+目次+