三城×幸田・お礼用SS
(キッチンの主)



恭一は自宅のPCの前で頭を悩ませていた。

三城と共に暮らすと決めて数日。

急速な引越しの日程とあり、その準備の為もあってここ数日は一人で阿佐ヶ谷の自宅に泊まっている。

長い間離れていて再会した途端こういった事になったが、体感的な二人の距離がタクシーで直ぐに行ける程度だと思えば辛さも半減以下だ。

本来ならさっさと荷物を纏めて三城の元に帰りたいのだが、その作業を怠りこうしてPCの前に陣取っているには訳があった。





二人の愛の巣は既に三城が用意しておりその上家具や家電などもほとんど発注済だと言っていた。

もちろんその全てが三城の支払いだ。

極庶民だと自負している幸田にはいささか三城の金銭感覚は解りかねるのだが、どうやら家具家電は全て一掃するようで、ただ三城がほとんど使う事のない家事用品だけは幸田の好きにさせた。

『これが間取り図だ。ここに収まるなら好きな物を買え。』

そういって言葉通り間取り図の描かれた紙と、クレジットカードを渡されたのだ。

「人のカードを使うのは違法じゃないんですか?」

法律に特別詳しいわけではない幸田は不安げに三城に聞いたが、

「夫婦だから問題ない」

と答えになっていない答えを返すばかりで、二人が法的に「夫婦」などで無い事は周知の事実だが、そうと言うと三城の機嫌が悪くなると解りきっているだけに、幸田は渋々それを受け取った。

本来なら「それでも」とここくらいは自腹を切るべきなのだろうが、いかんせん数が多い為そう簡単に言える事ではなく、申し訳ないと思いながらも従う事にしたのだ。

それでも購入前に三城に伺いをかけると、ことごとく幸田の選択は却下され「遠慮するな」と一蹴された。

これでは全く「幸田の好きに」させていないような気もするが、だがその三城の一言のおかげで幸田は高価でも本当に納得のいく物を揃える事が出来た。

長年使う物だし綺麗に使えばそれで良い、と自分にも納得をさせている。

元々幸田に「男のプライド」なる自尊心が三城よりも著しく低い事が、なにより二人の円満の秘訣だろう。





──そこでよくやく話は初めに戻るのだが、「家」「家具家電」そして「就職祝い」と称したプレゼントと三城には貰ってばかりだと気づいた幸田は、その礼をしようとPCでネットショップを徘徊していたのだ。

もっとも三城はそんな事をしなくていいと言うだろうが。

「う〜ん、どうしよ」

一体三城に何を贈ればいいのか、それが幸田は悩みだ。

一度「何が欲しい?」と聞いた事はあるが、「お前」とお決まりというかベタすぎる回答を得て、その晩は言葉通り腰も立たぬほど攻め立てられたのだが、それだけで幸田は納得しなかった。

気持ちは金では買えないが、誠意を金銭で表すのも大切だと思うのだ。

だがインターネットで色々なものを見ても「コレ」といった物は無い。

三城なら欲しい物は自分で買うだろう。

「困った・困った」と連呼しながら幸田の長い夜は深けていったのだった。



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