三城×幸田・お礼用SS
(花火大会・2)



所要時間僅か十数分で、幸田は艶やかな日本美女に姿を変えた。

元々が「日本人形のような」と謳われるだけの容姿の持ち主だけに、三城の見立てた浴衣と椎名のメイク技術を合わせれば、正に「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はなんとやら」を地でいく美麗さと言って過言ではない。

平均的な日本女性よりも高い身長は、和装にもとても栄えている。

「どぉお?」

手にしたブラシをチラチラと振ってみせる椎名は至極満足げで、桜色の唇を吊り上げた。

「えっと、その、綺麗、です。」

自分で自分を「綺麗」などど言うのはとても恥ずかしいのだが、上機嫌な椎名を前に下手な事は言えない。

それにナルシストの気は全く無いと思っている幸田でも、鏡に映った自分自身に「そこそこ見れたモノだ」と感じてしまったのも事実だ。

女装は二度目とあってそんな姿の自分を見る事に免疫が出来ていた事と、地毛をベースにポイントウィッグを使用したアップヘアが自然だったからかもしれない。

浴衣は全身のボディーラインを覆ってくれてはいるものの立てた襟から覗く男性特有の首の太さや喉仏は隠せず、だが襟足から流された左右一筋づつの髪がそれを上手く誤魔化してくれていた。

さすが椎名の仕事だ。

もっとも、幸田は自分に施されたメイク以外に椎名の作品は知らないのだが。

「でしょぉ。春海もきっと気に入るわ。」

「そういえば、春海さんは、まだなんでしょうか?」

バタバタとした作業に頭の隅に追いやられてはいたが、待ち合わせ時間(というよりも幸田が呼び出された時間だが)はとっくに過ぎているうえに幸田が部屋に入ってからも30分近くが経ち、今だ三城は現れていなかった。

「あぁ、春海はねぇ、下のラウンジで待ってるって言っていたわぁ。」

「そうなんですか・・・え!?」

さらりと事も無げに椎名が言うものだから、幸田はそのまま聞き流してしまいそうになったが、今の彼の言葉は聞き捨てならない。

着替えを躊躇う幸田を脅すかのように

『さぁ、春海が来ちゃう前にさっさと終わらせちゃいましょぉ。それとも着替えを見られたいかしらぁ?』

と言ったのは誰でもない彼だ。

胡乱な目つきで椎名を見ると、彼は悪びれもせず華やかな笑顔を向けた。

「さ、さっさと行っちゃいなさぁい。はいこれ。」

幸田に口を挟ます隙を与えず、椎名は和柄の小さながま口バックをそのほっそりとした白い手に握らせ、背中をトンと押した。

「浴衣は着物よりも断然脱がせやすいから大丈夫よぉ!」

何がどう大丈夫なんだという反論を幸田が口に出来るはずも無く、押し出されるように廊下に放り出されると、無情な音と共に目の前でオートロックの扉が閉まった。



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