三城×幸田・お礼用SS
(花火大会・3)



視線が痛い。

カンカンと大理石の床を鳴らす下駄の音がやけに大きく感じる。

女装なんてたった二回で馴れるわけもなく、恥ずかしくて恥ずかしくて幸田は出来うる限り下を向き、ホテルのロビーをつっきっていた。

前回クリスマスの時は常に三城と一緒だったというのに、どうして今日彼は部屋まで迎えに来てはくれなかったのだろう。

時間に間に合わなかったとか、合理性を考えたかという考えがふと過ぎったが、幸田は内心否定的に頭を振った。

仕事ならいざ知らず、幸田に対する三城はそんな事を気にするタイプではないはずだ。

だとすれば考えられる事は一つ。

「絶対、面白がってるよな・・・」

羞恥に肩を狭める姿を見て楽しむなんて、人としてどうかと思う。

そしてそこに悪意が無いのがもっと厄介だ。

広いロビーをいつもの半分くらいの速度で、だがいつもの倍以上の時間を感じながら幸田はラウンジへと入っていった。

何度も利用した事のあるラウンジはロビーの中央に在り、壁はなく一段高くなっているスペースと周りに置かれた観葉植物で店の中と外を区切っている。

この店なら、幸田が降りてくると予想されるエレベーターから此処までの道のりが丸見えで、さぞ幸田を観賞するにはもってこいの場所だろう。

「お一人様ですか?」

幸田が入り口から店内を伺っていると、荷物などを運んでくれるボーイと色違いの制服に身を包んだスタッフが、丁寧な物腰で声をかけた。

返事をしたいのはやまやまだが、さすがに声はまずい。

絶対ばれる。

「いえ・・・・」

タジタジとする幸田を助けるかのように、後ろからさっと肩が抱かれた。

大きな手が肩に食い込み、熱が伝わる。

見なくても誰だか解るその大好きな手は、更に力を込めて幸田を引き寄せた。

「あっ・・・」

「彼女は私の連れだ。」

そこにはニヤリと微笑む見知りすぎた顔──三城が立っていた。



+目次+