三城×幸田・お礼用SS
(春海の誕生日・1)



六本木の自宅から一番近くにあるこの界隈に似合いのセレブスーパーで、休日だというのに珍しく一人で幸田は買い物カートを押していた。

明るい店内に定番から珍しい種類の生鮮食品。

海外製品も各種並び、どれもこれも目玉が飛び出る程高価格だが一見して質も良くとても美味しそうに見える。

とはいえ、普段ならこんな高級店は避け少し離れた庶民向けスーパーに通っているのだが、今日は特別な日なので奮発する事にした。

なんと言っても今日は、初めて二人で過ごす三城の誕生日。

正確には誕生日は昨日だったのが、当日は別の重大な―――三城と幸田の入籍祝いの為、三城家全員が集まり入籍祝いを開いてくれたのだ。

秋人は経営するレストランを貸切にしただけではなく、この日の為だけのコースメニューを用意してくれた。

暖かな祝賀は何よりのプレゼントで、幸田は「いい大人が、もう泣かない」と決めていたにも関わらず、またもや目頭が熱くなってしまったのだった。

「えっと、残りは・・・」

にんじんに玉ねぎ、じゃがいもは家にあったから今日はパス。

「ワインは・・・昨日秋人さんがくれたし・・・」

昨日だって相当な高級ワイン(と三城が言っていた)を二本も開けたというのに、帰りがけに「お土産」と重厚なボトルを一本幸田に持たせてくれた。

三城は、「やはり父さんと裏取引が・・・」などと呟いていたが、幸田に意味は解らなかった。

ポケットから取り出したメモとカートの中を見比べる。

後はメインの牛ヒレ肉を買って、予約していたケーキを取りに行くだけでおしまいだ。

「今からだったら・・・十分間に合うよな。」

メニューや誕生日の計画は随分と前から考えていた物で、ささやかながらプレゼントも用意している。

幸田にとっては決して「ささやか」なプレゼントでは無かったが、今まで三城にもらった物々を考えると気が引けてしまうのは仕方が無い。

価格もセンスもまるで及ばないだろう。

けれど、せめて気持ちだけは伝えたくて、幸田はレパートリーの中で一番のご馳走を作ろうと気合いを入れここに来たのだ。

丹誠込めて作ろう。

美味しいと言ってくれるだろうか。

喜んでくれるだろうか。

想像しただけでつい緩んでしまう頬を引き締め、幸田は両手いっぱいに荷物を抱え自宅へと急いだのだった。



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