三城×幸田・お礼用SS
(恭一の発熱)



恭一が高熱を出して倒れた。

金曜日の夜、俺が仕事から帰りリビングのソファーで丸まっている恭一を見た時はどれほど驚いた事か。

慌てて体温を計ると38.8℃もある。

恭一の事だ、無理に無理を重ねそれでも自分に「大丈夫」と言い聞かせて動いていたのだろう。

「必要無い」という恭一を言いくるめ、夜間診察の病院に連れて行った時には深夜を回っていた。

不幸中の幸いと言うべきか、流行りのインフルエンザではなくただの風邪だと診断を受けた。

万が一インフルエンザだった場合の弊害に気づいたのはもっとずっと後の事で、この時の俺にはそんな所まで考えが及んでいない。

それほど動揺していたのだろう。

薬を飲んで安静に、ゆっくり療養すればすぐに熱も下がり治るだろうと診察を受けたが、ただ薬を与えて放っておくなど出来る訳もなく、俺は週末を良いことに恭一の看病をする事にしたのだった。



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とはいえ、病人の看護など初めての事で、何をどうしていいのか皆目見当もつかない。

悩む俺の隣では恭一が熱に唸っている。

何かしてやりたい。

その一心はあるが、一体何をすればいい?

俺は恭一の髪をただそっと撫でた。

(風邪の時は粥…か?)

だが料理なんて何年も作っていない。

一人暮らしを始めたばかりの頃少々かじりはしたが性に合わず続かなかった。

食事なんていくらでも作ってくれるヤツはいたし、外食だろうがインスタントだろうが気にするタイプでもない。

(だが粥は煮るだけ・・・だよな?)

中に何かを入れるべきなのか?

そもそも味付けは何だ?

今まで食べたものを思い起こしイメージはつくものの、曖昧な物を恭一に食わす訳にいかず、とにもかくにもネットで調べながらなんとか作り上げたのだった。



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「恭一、起きれるか?」

寝室の扉を開けた三城はいつもと変らぬ不遜な口調で問いかけ、キングサイズのベッドに一人横たわる幸田に近づいた。

「あ・・はい。大分、熱も下がったみたい・・です。」

赤い顔のまま上半身を起す幸田の背を支え、ベッドサイドに腰をかけた三城は空いている手で幸田の額に触れた。

「・・・、まだ熱いだろ。飯食って、薬飲んで寝ておけ。」

「はい・・。あぁ、そうですね。食べて薬飲まないと・・・春海さん何も食べてませんよね?何か作らないと。」

「お前な・・・こんな時くらい俺の事など気にするな。ちょっと待ってろ。」

惜しみつつ幸田から手を離した三城は、立ち上がりキッチンへと向かった。

いつも家事一切は幸田に頼りきりだった自覚はあるが、こんな時にも気を使わせてしまうのは日々の自分の至らなさにあるのだろう。

十分に反省をしつつ、三城は小鍋に作った卵粥と茶碗と蓮華を盆に乗せ寝室へと戻った。

「・・・へ?」

戻って来た三城と手にする物を見た幸田はあからさまに目を剥いた。

想像だにしていなかった、と顔一面に書いてある。

盆をサイドボードに置くと三城はベッドサイドに腰掛け、粥を小分けした茶碗を幸田に渡した。

「作った。食え。」

「作ったって春海さんがですか?」

幸田は受け取ったものの、不思議そうに首を傾げてみせるばかりだ。

風邪のせいでとろんとした目元をしているが、相当に驚いているのだろう。

「他に誰が居る。」

「でも、春海さん、普段料理なんて・・・」

「今は普段じゃないだろ?さっさと食え。」

焦れた三城は幸田の茶碗に刺さっている蓮華を取ると口元に突きつけた。

「んっ熱っ」

熱していたばかりのそれが熱いのは当たり前だ。

幸田は肩を竦め、目をギュッと閉じた。

「すまない・・」

「・・・・・フーフーしてください。」

「は?」

「熱くて、食べれません。」

虚ろな瞳を上目使いにそして唇を尖らせる幸田を前に、三城が拒絶を見せれる訳が無い。

恥ずかしくはあったが、言われるがままに蓮華に息を吹きかけ冷ますと、再び幸田の唇へ運んだ。

「食えるか?」

「・・んっ。・・・はい、美味しいです。」

一口を咀嚼した幸田は嬉しそうに笑いながら三城の肩に頬を擦り付けた。

ヘヘッと笑いまるで子猫のように甘える仕草がいつもよりもいっそ甘く感じ、これも熱の効果ならばたまにはいいかもしれない───などと思ってしまった三城なのだった。



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