三城×幸田・お礼用SS
(空港で・前編)


*謝罪と注意*
新婚旅行編11を書くに辺り、二つ考えたお話のボツにしたモノになります。
「幸田さんならこうなのもあるかな、」というこちらもSSとして書いてしまいました。
混乱を招く結果になってしまい、申し訳ありません。

逸れてはいけないと三城から目をそらさずに後ろを着いて行っていたが、そうすると今度は足元が疎かになってしまう。

何度もスーツケースに躓いているので、きっとつま先が当たるそこはすでに傷だらけになっていそうだ。

買ってもらったばかりなのに申し訳がないが、傷つけないようにと気を回せるほどの余裕はない。

足を引っ掛ける度に三城との距離は少しずつ開いてしまう。

(わっ・・・待って、待って・・・)

心の中で叫べど、口には出せない。

何故なら三城は通話中だ。

それも全てを聞き取る事は出来ないが、英会話は仕事の相手と思われる雰囲気で、不用意に声をかける事を躊躇っていた。

(なんであんなにスイスイ歩けるんだよ。)

三城は幸田と全く同じスーツケース、それに加えブリーフケースも持ち、それらを押しながら片手で通話もしているというのに、極普通の足取りで歩いていく。

もちろん躓きもしないし、人にぶつかりもしない。

上手い具合に人波を縫っていき、だからといって会話が疎かになっている様子も微塵も無く、これぐらい出来てこそ「エリート」と呼べるのだろうと納得してしまう。

(凄いな。)

馴れれば自分もあんな風に、せめてスーツケースぐらい真っ直ぐに押せるだろうか。

三城の後姿を見つめていた幸田は、ついボンヤリとしてしまったようだ。

「わっ」

スーツケースの車輪に靴が引っかかってしまった。

太ももがキャリー側面に当たり、グラリと身体が大きく傾いで前のめりになる。

転倒してしまいそうな危機感も覚えたが、スーツケースの上部に両手をついてなんとか持ちこたえる事が出来た。

だが、手元を見ながらホッと息を吐き、次に顔を上げた時には───目の前に三城は居なかった。

「・・・え?」

その間僅か数秒だ。

たったそれだけ視線を外しただけなのに、自分と三城の間には背の高い白人の集団が立ちはだかっていた。

正確には、三城がどこに居るのかわからないので「二人の間に」という表現は間違っているかもしれない。

「どうしよ・・・・春海さん・・・」

右を見ても左を見ても三城は見当たらない。

見えるのは大柄な外国人ばかり───。

予測していた最悪の事態に陥ってしまった幸田は、呆然と立ち尽くすしかなかったのだった。


+目次+