三城×幸田・お礼用SS
(空港で・後編)

*注意*『』内のセリフは英語です。

*謝罪と注意*
新婚旅行編11を書くに辺り、二つ考えたお話のボツにしたモノになります。
「幸田さんならこうなのもあるかな、」というこちらもSSとして書いてしまいました。
混乱を招く結果になってしまい、申し訳ありません。


『えぇ、その件は以前お話した通り・・・・いえ、必ず連れて行きますので。』

まったく、明日会うのだからさっさと電話を切らせてくれ、と三城は内心鬱陶しく思いながらも、相手が相手だけにこちらから通話を終える事がなかなか出来なかった。

やたらと話したがる相手も忙しい人だろうに、これでは仕事に格好つけ三城との通話でサボっているとも捉えられる。

業務時間中ならいざ知らず、幸田と一緒の時間にそんなくだらない事につき合わされたくも無い。

早くタクシー乗り場に行きそれを理由に電話を切ってしまおう、と足だけが逸った。

とはいえ、だから、というのは言い訳にもならない。

ふと気がつき振り返った時には───、後ろに居るとばかり思っていた幸田の姿がなかったのだ。

「っ!?」

三城はサッと青ざめ息を呑む。

視線の先に見えるのはこの国では珍しくも無い、三城と同じ程の身長の男らが数名。

男達が壁となりその向こうに幸田が居るのか居ないのかも解らなかったが、ただ一見して見当たらないのは確かだ。

(どこだ。何処に行ったんだ。)

嫌なほどに心臓はバクバクと鳴るし、冷や汗が出そうな心境に喉も渇く。

頭の中の混乱ぶりは異常なまでで、いつでも冷静沈着だと評判高い三城が他で見せた事がないほどに焦っていた。

(恭一・・・恭一、どこへ行った。)

英語は得意ではないと言っていた。

携帯も通じない。

こんな事なら使用可能な携帯を渡しておけば良かった、などと言っても後の祭りだ。

すぐさま踵を返した三城だったが、思った以上に人が多く行く手を阻まれてしまう。

『明日は一旦本社に来るんだろ?』

電話の向こうでは、状況や三城の心情など知りもしない相手がのん気な声で話した。

『・・・・』

その声は耳に入ってきても脳までは届かない。

『ハルミ、どうかしたのか?』

『申し訳ありません。急用の為、後ほどお電話お掛け直しします。』

『ハルっ・・』

──、ツーツー

言うが早いか、早口にまくし立て一方的に通話を終えると携帯をポケットに押し込んだ。

今は無礼だとか立場がなどと考えている余裕はなく、早く幸田を見つける事だけが三城の全てだった。

どこだ──どこに居るんだ。

見つけられない、と思わず舌打ちをしそうになった時、見紛う事のない美しい漆黒の髪が視界を掠めた。

(あ・・・)

居た。

人垣の向こう側に、俯き立ち尽くす幸田が。

表情こそ見えはしなかったが、下がった肩から不安で不安で仕方が無い様子が感じられる。

出来る事なら、スーツケースなど置き去りにして今すぐに駆け寄り抱きしめたい。

胸の中に閉じ込め、安心しろと口付けを施したかった。

「恭一!」

広い通路に、三城の良く通る美声が響き渡った。

「あ・・・春海さん。」

早足で駆け寄る三城を、幸田は呆然と見つめた。

想像通り不安に満ちた顔を上げた幸田だったが、二人の視線が絡み合うとフワリと柔らかい笑みを浮かべる。

それがあまりに無防備で、こんな表情をさせられるのは自分だけだと思ってしまうから。

コイツは自分のものだと感じずにはいられないのだ。

「悪かった、一人にして。」

「いえ。」

幸田の前に立った三城は、手の平を上にスッと右手を差し出した。

「え?」

「いや?」

いや、なんでもない。

ただ、離れないで側に居てくれれば。

「そうですか。」

眩しそうに目を細め微笑んだ幸田は、ただそれだけを言うと差し出した三城の手を取り、強く握った。

「行くぞ。」

「はい。」

再び歩き出した幸田の表情が幸せそうだと思ったのは、三城の気のせいではないだろう。



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