三城×幸田・お礼用SS
(歓迎会で・1)



由志高校に新任の教師が来るのは数年ぶりの事だった。

それも若くてかっこいい───というよりもとても綺麗な男性だったので、原田里奈【はらだ・りな】を含む女性教師は浮き足立っている。

「だけど、幸田先生指輪してるわよ?」

「そりゃね、アレだけの顔ですもん。彼女の一人や二人居るでしょ。」

「結婚は?」

「まだみたいよ。独身だって校長が言ってたもの。でも、そんなのはどっちでも良いのよ。職場のカッコいい男なんて恋愛対象じゃなくて目の保養でしょ?」

歓迎会の席である。

某居酒屋チェーン店でおこなわれている「幸田先生の歓迎会」と称した飲み会は既に中盤に差し掛かり、由志高校の関係者で占められた座敷では皆が好き勝手にやっていた。

そんな中、大学時代からの先輩である大石に捕まっている今夜の主役・幸田を遠巻きに見つめ、里奈と塚物有里子【つかもと・ゆりこ】はヒソヒソと頬を寄せ合わせた。

里奈も有里子も由志高校の教師で、年は共に三十代半ば。

年齢の割りに若く綺麗にはしているものの、何せ出会いがないので恋や愛とも縁遠い。

恋人も欲しいが仕事も充実している。

だから特定の男を作るよりも、こうやって身近な綺麗な男を見てワイワイと騒ぐ方が楽しいというもので、最近の里奈と有里子の話題はもっぱら幸田の話しだった。

何せ、幸田という男はとても不思議な人物だ、というのが二人の共通意見で、その最たる所は持ち物が全て高級品である、という事だ。

男性教師らは誰も気づいていないようだし、幸田自身鼻にかけた様子もなかったが、身につけているモノは上から下まで高級ブランド品ばかりだと二人にはすぐに解った。

スーツやシャツ・ネクタイはもちろん、靴や鞄、それにボールペンに至るまで、どれもこれも値の張るものばかりだ。

中でも一番驚いたのが、幸田が何気なくつけている(全てそうなのだが)腕時計で、どこかの雑誌でみた限り、自分たちの給料では丸々4回分を使っても購入できないような金額だったのだ。

何か副業をしているのか、それとも実家が大金持ちなにか、あーでもないこーでもない、と話すのが二人のお決まりの会話となっている。

最近では、宝くじを当てたのではないか、という話しも持ち上がったが、普段の言動を考える限り一見物欲が薄そうな幸田が、大金を手にしたからといってブランド品を買い漁るか疑問だ。

そして幸田の指に光るプラチナと思われる細い指輪も、日本ではまだ珍しいデザイナーズブランドのものだが、アメリカなどでは既に有名ブランドの仲間入りをしている。

なぜそんなブランドのモノを持っているのか。

幸田の実態が謎に包まれている由縁はそんなところだ。

それに加え、あの容姿に物腰の柔らかく、だが生徒にはきっぱりとした態度をとっており好感も良い。

更に昼食の弁当を持参し、どうやらそれが幸田の手作りらしいとくれば、こんなにも良い男はまたといない、と感じても仕方が無いだろう。

「あーあ。幸田先生に愛されてる彼女ってどんな人なんだろ。」

数杯目の水割りを飲みながら、有里子が酔った口調で言った。

「そりゃぁ、すーごい美人で、優しくてホンワカした人じゃない?」

「何、そのホンワカした、って。」

「ホンワカはホンワカよ。癒し系っていうの?だってさ、幸田先生が気の強い女の人と付き合ってるの、想像出来る?」

「・・・出来ない。確かに、守ってあげたいようなか弱い人が好きそうだし、美人より可愛い系がタイプっぽい。」

「でしょ?」

「例えばさ、───」

タレントだったら誰が好きそうだ、音楽は何を聴きそうだ、とあっているのかいないのか、二人の妄想話は膨らんでいったのだった。




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