三城×幸田・お礼用S・S
(いつかの元旦)



とある一月一日。

新年最初の料理はやはり雑煮作りだろう、とどこか嬉しげな笑みを浮かべた幸田は、エプロンを付けキッチンに立っていた。

野菜もよく煮えたし、後は餅を用意して完成。

祝い箸や取り皿は既に並んでいるし、おせち料理も買ってきた物をダイニングテーブルに運んである。

当初、おせちも作ろうと思っていたのだが、二人分だと考えると市販のものはどれも量が多すぎた。

その上どんな物を用意すればいいのかも解らないので、三城の提案と沙耶子の進めで今年は購入する事にしたのだ。

手作りならば幸田が請け負うのだが、購入をするならその役目は三城になる。

選んで注文するという行程全てを彼にお願いした所、昨日届けられたそれは想像を絶する物だった。

もはや「おせち」とは何だったのだろう、と考えてしまいそうな豪華さで、中身は和洋折中。

昆布巻きや黒豆も入ってはいたが、ローストビーフや伊勢海老のスモークも入っている。

初めて蓋を開けキラキラ光る中身を見た時、重箱の前で幸田は固まってしまったが、三城は至って平然と「これこそがおせちだ」と言わんばかりだった。

どこか「違う」と思わずにはいられなかったものの、それよりも「美味しそうだ」と感じた気持ちが強く、幸田はおせちの中身など気にしないと決めたのだ。

ようは縁起物。

正月気分を味わえればそれでいいし、美味しければ尚良い。

そのかわり雑煮くらいは頑張ろうと意気込んだのだった。

「・・・・そろそろ、いいかな。春海さーん、出来ましたよ。」

正月用の赤いお椀に雑煮を盛り付けた幸田は、それをダイニングテーブルに運びながら、ソファーで新聞を読んでいる三城に声をかけた。

すぐに新聞を畳んだ三城が席につく。

「旨そうだな。」

「どうぞ、冷めないうちに。」

エプロンを外した幸田も三城の前に腰を降ろした。

見た目だけは綺麗に出来たと思うのだが、味はどうだろう。

幸田が上目遣いに三城の反応を伺っていると、彼は雑煮が入った椀をチラリと見てから幸田に視線を移し興味深げに呟いた。

「恭一の家は白味噌なのか。」

「はい。・・・あ。勝手に作ってしまいましたけど、大丈夫ですか?」

何も考えずに作ってしまったが、雑煮という料理には地域性があるのという事をすっかり忘れてしまっていた。

心配げに「食べれるか」と視線で問う幸田に、三城は柔らかい笑みを浮かべる。

「あぁ、問題はない。ただうちはずっとすましだから、これが新鮮だっただけだ。」

「へぇ、そうなんですか。三城家はおすましなんですね。東京がそうなんですか?」

「東京、というよりは多くの地方の雑煮がすましなんだ。白味噌という事は、関西か?」

「えぇ、母が京都出身で。お餅はどうするんですか?」

「餅?」

「これは丸餅を煮ているんですけど、三城家はどんな物を入れるのかな、って。」

「うちは焼いた角餅を入れていた。」

「わかりました、明日はそれにしますね。」

すましの雑煮も幸田は好きだったが、けれどそれはインスタントのすましに餅を入れただけの物だ。

三城に出すにはそういう訳にはいかず、果たして作る事が出来るのだろうか。

(そうだ、お義母さんに教えてもらえばいいんだ。)

名案を思いついたとばかりに笑みを漏らした幸田に、三城は目を細め唇の端を上げた。

「食べるか。」

「はい、食べましょうか。いただきます・・・あ、そうだ。」

幸田は持ち上げかけた箸を下ろすと、両手を膝の上に置いた。

「どうかしたか?」

「えっと。改めまして、あけましておめでとうございます。今年も一年よろしくお願いします。」

今年一年が良い年でありますように。

彼と一緒に様々な事を頑張れますように。

胸に宿る願いを込めて小さくお辞儀をすると、幸田は照れた笑みを浮かべた。

「こちらこそ一年、いや、これからもずっとよろしくお願いします。」

フッと笑った三城が、真っ直ぐに幸田を見つめて言った。

自尊心の溢れるその顔が、幸田は大好きだった。

その顔を見られただけで、何でも乗り越えていけると思ってしまうのだ。

「はい。」

満面の笑みを浮かべた幸田は、少し冷めて餅も固くなってしまった雑煮を旨そうに啜ったのだった。



+目次+