三城×幸田・お礼用SS
(彼女の噂)



「部長〜今日はもうお帰りですか?」

いつもは深夜残業が当たり前の三城だが、金曜の夕方だけはそそくさと1時間も残業をせず帰るのだが、帰り支度をする三城に年上で部下の女性から声をかけられた。

彼女が前々から三城を狙っているらしい事は、三城自身気づいていたのだが相手にはしてい。

香水をつける女は嫌いなのだ。

ついでに言うならば、顔はそこそこ程度のくせにやけに甘ったるい口調や態度、仕事が特別出来る訳でもないのに派手派手しいだけの格好。

どれをとっても三城の趣味ではなかった。

「あぁ、約束があってな」

「あ!もしかしてデートですか?」

年不相応にキャピキャピと尋ねてくる相手を鬱陶しく思うが、一応社会人として無視をする訳にもいかない。

「あぁ」

「彼女居たんですね〜ガッカリ」

わざとらしく落ち込んだ素振りを見せる彼女に「だから何なのだ」と、怒鳴りつけたい衝動にかられる。

だが何とか自分を抑え、彼女から逃げようと鞄を持ち上げてその場を離れたが、彼女はついて来た。

本当に鬱蒼しい。

女とはこんな邪魔臭い生き物だったのだろうか。

生まれつきのゲイを自称する幸田の気持ちがわかるような気がした。

「どんな人なんですか?彼女」

打たれ強いのかバカなのか。

尚も追いすがる彼女に「彼女ではなく彼氏だ」と言えば流石に引き下がるだろうか、とも思った。

しかしこれからも彼女との(仕事上での)関係が続く以上、軽率な行動は取れない。

勢いだけでカミングアウトする気は失せ、諦め似た深いため息を吐くと歩いたままはっきりとした口調で言った。

「綺麗な日本美人だ。知的な割りに抜けている所もあって放っておけない。」

自分では気づいて居ないようだが、幸田を語るその顔は十分に蕩けたものだった。

今まで会社で、いや人生においてもこのような表情をした事がないかもしれない。



*****

女の嫉妬かあてつけか。

翌日から「部長の彼女は天然ドジッ子」という噂が流れてしまった。



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