三城×幸田・お礼用S・S
(携帯電話)



ニューヨークの本社から帰ってきた三城に押し倒されたのは数時間前。

その時は「ランチには少し早い」時間だったが、今となっては「ランチを取るにはギリギリ」といった頃合だ。

中途半端な時間ではあったが昼食をパスするには日が高すぎるとあり、幸田は脱がされた服を急いで着なおしていた。

朝食時に話に上ったカフェはここから近いらしく、徒歩で行ける距離なのでホテル内で済ませるのとそんなにも差はないのだろう。

「恭一、準備は出来たか?」

「うん・・・後髪を梳かしたら出れるから」

スニーカーの紐を結ぶとパタパタとパウダールームへ向かい、ベッドの上で乱れた髪を手櫛で宥め鏡を覗き込んだ。

連日の性交で喉は痛いし目も腫れているような気がする。

元々三城と容姿を比べても仕方が無いと諦めているが、彼に恥ずかしい思いはさせたくない。

女性のようにメイクをする訳にもいかないけれど、少しでも良く見えればいいなと思ってしまう。

「・・・ま、仕方ないか。───お待たせ」

普通に話せ、との指令は難しいものではあったが、失敗をした時にどんな目に合わされるかを先ほど身をもって教えられた。

何が「罰にキス」だ。

それだけでは済まなかったじゃないか、と内心悪態を付いても、頬が緩んでしまうの自分が情けない。

メインルームへ戻ると、三城はソファーに座り手の中の何かを眺めており、近づくとそれは真新しい携帯電話でもちろんどちらの物でもない見覚えのない形である。

傍らに帰宅時に三城が手にしていた紙袋があり、携帯電話一式が入っていたようだ。

三城の隣に腰を下ろしそれを覗き込むと、彼はその携帯を幸田へ差し出した。

「春海さん、何これ?」

「お前の携帯だ。短縮『0』が俺、『1』が警察。中は英語表記だがそれだけ解れば後は必要無いだろう」

「僕の携帯、買ってきてくれたんだ。ありがとう・・・・警察も必要ないと思うけど」

ほっこりと嬉しい気持ちになり笑みを零しながらポツリと呟くと、三城は鋭い声を上げた。

「必要だ。ニューヨークでは何があるか解らないんだ。特にお前は目立つ顔をしているんだ、精一杯気をつけろ」

「ニューヨークが危険なのは噂に聞くけど・・・」

目立つ容姿か否かはわからないけれど。

三城が心配をしてくれているのだけはしっかりと解った。

両手で握り締めたポールホワイトの携帯電話は、プラスティックのはずなのにとても暖かい気がした。



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