三城×幸田・正月帰省・編・2



1月2日。

乗りなれた右側の助手席に座り、幸田はドキドキと緊張に鼓動を高鳴らせていた。

きっちりとスーツを着込み、真っ白いシャツは降ろし立てで、厳選に厳選を重ねて選び抜いたネクタイを締めている。

今から三城の実家に向かうのだ。

同じ都内という事もあり、到着までそう時間はかからないだろう。

後たった数分で三城の親兄弟と対面するのだ。

今日は両親と、年の離れた兄二人が集まるのだと聞いている。

胸の前で握り締めた指には、悠然と指輪が光っていた。

三城は自分をどのように言って家族に紹介するのだろう。

友人だろうか。

こんな正月早々にただの友人、それも大した年月も付き合っていない友人を連れて行けば変に思われないのだろうか。

まさか恋人なんて言わないだろう。

極真っ当にきっと非行の一つもせず、いやそれどころか(きっと)真面目にエリート街道をひた走ってきた三城が、いきなり同性の恋人を連れて帰れば両親は驚きのあまり倒れるかもしれない。

そう言えば、三城は今まで正月に恋人を連れて帰った事はあるのだろうか。

それ以前に何人くらいの女性を両親に紹介したのだろう。

幸田自身は、成人して間もなく両親を共に亡くしているため、恋人を紹介する事は一度もなかった。

だいぶ早い時期、たぶん中学生くらいで自分が同性にしか「立たない」事を理解したが、両親にそれを告げる事はなかったな、と逸れた思考でボンヤリと感慨に耽り、窓にコツンと額を寄せた。

「どうした?」

「いえ、、、えっと、僕の事なんて説明するのかなって。」

体勢を起こし、三城を見つめる。

「両親の事を思い出していた」とは何となく言えず、少し口ごもってからその場しのぎのように伺った。

その場しのぎとは違うだろうが、不意に口から出た繋ぎの言葉という意味では正しい。

「友人ですか?まさか恋人なんて事ないですよね。」

幸田は冗談めかして言うと、声をあげて笑って見せた。

隣で正面を向いて運転をする三城からは、フッと鼻で笑ったのが聞こえる。

「そんな訳ないだろ」

「ですよね。」

やはり少しだけ、寂しい感じがしたが、きっと気のせいだ。

「嫁を連れて行くと言った」

「へぇ、、、はぁ!?」

どうしてこの人は、いつも幸田の予想を裏切る事ばかりするのだろう。

何処までも楽しげな笑みを浮かべてみせる三城を、呆れ半分戸惑い半分で幸田は見つめ続けた。



 
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