三城×幸田・正月帰省・編・3



クリスマスの夜以来、二人の仲はそれまで以上に縮まった、と思う。

それまで二人の間に「好き」だとか「愛してる」と言う言葉はあまり無かったのだが、最近では頻繁に口にするようになった。

三城の愛を幸田が疑わなくなったからだろう。

それに、何かというと三城は幸田を「嫁」と言い、幸田も文句を言いながらもまんざらではなかった。

幸田が贈られた指輪は、当然のように三城とペアだ。

どんな顔でこのどう見ても男サイズの指輪をペアで買いに行ったのだろうと想像したが、三城ならば極平然と注文しそうだと結論に辿り着いた。

その指輪は今も二人の指で輝いており、「嫁」と紹介されれば驚きながらも納得してしまうだろう。

本当にいいのだろうか。

幸田が不安げに三城の横顔を見上げた時、車は停車した。

「開けて来るから待っててくれ」

一言を残し、三城は車から降りて行った。

ずっと自分の世界に入り考え事をしていた幸田は気づかなかったが、一たび意識を戻し窓から辺りを見渡せば、そこはいかにもな高級住宅街だった。

それこそTVなどでしか見た事がないような大きな家が並ぶ。

何処までが一つの敷地なのか解らないほどで、塀の変わり目が見当たらない。

以前何度か大学の教授の自宅に招かれた時も、大層大きな家だと驚いたが、この辺りはその比ではない。

呆然と見ていると三城が車へと戻って来、再び発進させた。

敷地へと入る門を開けていたのだ。

中へ進むと、また幸田を驚愕させた。

広大な庭に建つ家自体は一般的な一個建て二つ分くらいなのだが(それでも十分大きいが)、その横にある屋根付きのスペースに目を奪われた。

駐車場だろうそこには、パッと目を惹くいかにも高級だと言わんばかりの車が何台も止まっている。

今日集まっているのは両親と兄弟だけだと聞いているが、他にも居るのだろうか。

数えてみると8台だ。

それでもまだ駐車スペースは余り、三城の車も易々と止まった。

三城の自宅マンションの駐車場も高級車で溢れていたが、此処は一個人宅だ。

驚きすぎて言葉も出ない。

「さ、着いたぞ」

実家だから当たり前なのだが、三城は何事も無く車から降り立った。

幸田も慌てて後を追う。

「待ってください。あの、三城さんのご両親って何をしている方なんですか?」

「弁護士だ」

弁護士は一般的なイメージからして高給取りだとあるが、だからといって此処までのものなのだろうか。

幸田の疑問が伝わったのだろう。

三城はどうでも良さそうに再び口を開いた。

「企業相手の弁護士事務所の所長もしているんだ。長兄はそこで弁護士をしている。」

つまる所社長なのだろう。

「へぇ、、、」

度重なる驚きから間の抜けた返事しか出てこない。

ちなみに、すでに他界している幸田の父親は極普通のサラリーマンだった。

同じサラリーマンでも三城のようなエリートコースではなく、役職があるのか無いのかもよくわからない、「しがない」サラリーマンだ。

そんな父を恥じた事など一度もなかったが、明らかな「産まれの差」を感じてしまう。

「母親は普通の専業主婦だ。、、、大丈夫だ。」

何が「大丈夫」だとは言わなかった。

三城は玄関に立つと、幸田の腰をそっと抱き寄せてニコリと微笑み、訪問を知らせるチャイムを鳴らした。

いよいよだと幸田の脳が震える。

三城の腕を振り払う事も、指に填めた揃いのリングを外す事もせず、悠然と微笑む男を見上げた。

その顔は、幸田の好きな自身に満ち溢れた表情だった。



 
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