三城×幸田・正月帰省・編・6



数分経っても沙耶子は戻らず、他の誰も来なかった。

沙耶子が自分の事を他の人達に報告しに行っているのではないだろうか、と幸田は考えていた。

三城が連れてきた「嫁」が男である事をあっさりと受け入れた風には見えてが、それと認めたかどうかは別の話しなのだろう。

仕方が無い、と何度目か解らないため息を吐き、思考を追いやるように室内を見渡した。

物珍しい幸田とは反対に、三城はこの状況にとっくに飽きを感じていたようだ。

隣に座った三城の手が、悪戯に幸田の太ももへと伸びる。

サワリとそこを撫でまわし、幸田の制止よりも早く下肢へと降りた。

「あ、、、三城さん、何してるんですか。誰か入って来たら、、、」

自身をズボンの上から包み込むように握る三城の手首を掴みながら、幸田は潜めた声で焦って言った。

こんな所で欲情する訳にはいかないのだ。

そんな事は三城とて解っているだろうに、何を考えているのだろう。

瞳に非難の色を湛えて睨みつけ見てもまるで効果がない。

それどころか、三城のもう一方の手で顎を掴まれ、唇を重ねられた。

「んっ、、、」

三城の薄い唇は見た目よりも柔らかく、条件反射のように瞼を閉じてしまう。

簡単にこじ開けられた口内に、三城の舌が容易く侵入した。

ネットリと舐る[ねぶる]ように舌先を絡め合わされ、唾液を注がれる。

不快感よりも、羞恥と快感の方が遥かに大きく、三城の手首を握っていた手の力はすぐに抜けた。

ここが何処だか忘れた訳ではないのだが、下肢を揉みしだかれる感覚と巧みなキスで「もっと」とねだってしまいそうになる。

夢中になり過ぎていたのだろう。

周囲の音は何も聞こえず、ただ二人の舌が絡まりあうクチュリという水音だけが淫猥に幸田の脳を刺激した。

「、、、何をしてるんだ?」

どれ程そうしていただろう。

聞き覚えの無い声が凛と響き、幸田は我に返った。

扉が開く音も、足音も何も聞こえなかったのだ。

慌てて三城を突き放し、咄嗟にそちらを見ると、そこに立っていたのは洒落た三つ揃えを着た銀縁眼鏡の男だった。

三城より少し年上に見える事もあり、二人居るという兄の一人だと思い当たる。

沙耶子似なのだろうか、三城とはあまり似ていない。

ほっそりとした面持ちと鋭い瞳をしている。

短く揃えられた黒髪は丁寧に撫で付けられているが、前髪をオールバックにしている事もあり、只者では無いオーラを感じた。

三城から感じられる「エリート」然とした空気とはまるで違うそれが何なのかは解らない。

よりにもよってまだ紹介もされていない(されていたら良いという訳でもないのだが)恋人の兄に濃厚なキスシーンを見られてしまった。

幸田は赤面を通り越して真っ青になった。

第一印象は最悪所ではない。

「あぁ、秋人【あきと】兄さん。ご無沙汰しています。」

だが三城は何事もなかったように社交的な笑みと口調で応え、幸田を隠すようにスッと立ちあがった。

自分も立ち上がるべきかと迷った幸田だったが、とんだ場面を見られてしまったパニックにより上手く回らない思考では答えは出ず、大人しく座って事態の進行を眺める事にしたのだった。



 
*目次*