三城×幸田・正月帰省・編・7



秋人はあれ以上二人に何を言う訳でもなく、チラリと幸田を見ると(長椅子と一人掛けの椅子がそれぞれ2つづつで、口の字型にソファーは置かれているのだが)、三城の隣にあたるソファーへと座った。

幸田は居た堪れなさを背負いながらも、耐えるしかない。

三城も秋人を幸田に紹介しようとしないし、秋人も又何も言わないからだ。

自分から何かを言えるほど積極的な性格を幸田はしておらず、結果黙って大人しくしているしか他にない。

間もなくして、6人分のお茶を盆に乗せた沙耶子が部屋へと入って来た。

「お父さん達遅いわね。、、、あぁ、やっと来たわ。お父さん、皆さんお待ちかねよ。」

お茶を配っていた沙耶子が弾む声で言ったが、その途端部屋の空気が変わった気がした。

それは決して比喩では無いだろう。

それまで重かっただけの空気が酷く張り詰めたものになり、俯きかけていた幸田も自然と顔を上げた。

きっちりとスーツを着込んだ二人の男性が部屋へと入って来る。

三城の父と兄だろう。

父親だと思われる男性が幸田達の正面に座り、兄は幸田の隣にあたる椅子へと腰を降ろした。

秋人と比べても年上だろうその人が、弁護士だという長男だと思われる。

チラリと見ただけだが、秋人よりも三城に似ており、年の分落ち着きと威圧感を増させた感じだ。

長兄は三城や秋人よりも発する圧のようなものが強い気がしたが、父の前ではそんな物は無意味だった。

三城の父だというからには相当な人物だろうという覚悟はあった。

だが実際に目にしたその人は、想像を遥かに超えている。

いかにも人にも自分にも厳しそうで、「厳格」という一言が此処まで似合う人物も珍しいだろう。

厳しく唇を結ばれた表情は一欠けらも笑ってはいない。

もしもその顔で叱咤されたならば、何もしていなくても謝ってしまいそうな気がする程だ。

幸田はそろそろと視線を上げて真正面に座る父を見、逆に痛いほどの視線を返された。

やはり沙耶子から何か聞いていたのだろう。

二人は幸田をじっと見たが驚いた様子は無い。

それとも、ただの友人と思っているのだろうか。

お茶を配り盆を置きに行っていた沙耶子が席につくと、ようやく父が口を開いた。

「あけましておめでとう」

惚れ惚れとするほどの低く渋い声だ。

「あげまして、おめでとうございます」

「あけましておめでとうございます。」

双方から声があがり、座ったまま頭が下げられる気配がした。

幸田も慌ててそれに習う。

下げた頭をそのままに出来ればいいのに、と思うもそんな訳が行くはずがなく、幸田は意を決して再び顔を上げたのだった。



 
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