別れ道・1



月に数度訪れるバーのカウンターで、真田和馬【さなだ・かずま】はグラスを揺らしていた。

ここに来る時は決まって待ち合わせをしている時だ。

待ち人はいつも同じ。

──カラン

暫くして、バーのカウベルが鳴る。

振り返るとそこには、ピシリとスーツ姿が決まった一人の男が立っていた。

「やぁ」

真田が片手を挙げるとその男が薄っすらと笑みを浮かべて近づいてくる。

「待ったか?」

「ううん、今来た所だよ。」

そうは言うが、真田の前に置かれたグラスの中のアルコールは残り少なかった。

男もそれに気がついたのか、一見冷たく見える面持ちを瞳だけ優しげに細め、自然な仕草で真田の肩に触れる。

スツールから男を見上げた真田も応えるように頬を染めて微笑んだが、薄暗い店内でそれに気づいた人物はいないだろう。



 
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