別れ道・4


翌日、早朝。

ホテルのベッドから一人抜け出そうとした真田の腕を、澤野が捕まえた。

「、、、まだ行くなよ」

「そんな訳にはいかないよ」

真田が困ったような笑みを浮かべると、澤野はすぐに手を離した。

頭から布団を被り、片手だけを出すとバイバイをするように振る。

そんな澤野を見ると、苦しさがこみ上げて来るのだ。

何度「帰らない」と言おうと思ったか。

けれど、それが口から零れる事が無いだろうという確信も真田の中にあった。

「、、、また、連絡する」

澤野は何も言わない。

真田は「愛してる」の言葉を飲み込むと、素早く着替えてホテルを後にした。




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外へ出ると、冬に近づく低い空が早朝の冷たさを伴って重く圧し掛かる。

空か雲かの境界もよくわからない灰色のそこに、一羽の名も知らぬ鳥が飛び立った。

あの鳥は再びこの場所に戻って来るのだろうか。

それとも、真田が知らないだけであの鳥のすみかはここなのかもしれない。

人も少ない街中で、電車の音だけが帰りを急かすかのように真田の耳に響いていた。



【完】



 
*あとがき*
*目次*