やっぱり好きな人・編・04



 三城の言葉の意味など理解も出来ないまま立たされたかと思うと、彼の手は流れるような仕草で恭一のズボンを膝まで下ろした。
「春海さん?」
 ラフな部屋着のズボンはウエストゴムで、抵抗の余地はない。そのうえ戸惑う恭一をよそに、三城はそのボクサーブリーフの下着も同じようにした。
「邪魔だな。脱げ」
「え? ちょっと待って」
「良いから脱げ」
 余程面倒なのか、説明をする素振りも見せない。
 煌々と明かりが付いたメインルームの真ん中。甘い雰囲気でもなく、疲れ切ったばかりの様子の三城に下半身を露出させられる。
 苦言よりも疑問が浮かび質問を投げかけたかったが、今は何を言ったところで、三城は真っ当な答えを返してはくれないだろう。三城という男と随分と同じ時間を過ごして来たので、その程度は想像がつく。
「春海さん、何? こんな所で。恥ずかしいよ」
「座れ」
「あっ」
「俺だってゆっくりしたいさ。だが……いくら時間があっても足りなくなりそうだからな」
 足先からズボンと下着を落とし、下半身を剥き出しにされる。
 目の前の三城はスーツのジャケットすら身につけたままだとうのに、あまりにも羞恥的だ。そのうえ再び腕を引かれたかと思うと、恭一は三城の膝に跨いで座らされた。
「あんまり、見ないで」
「見ないと意味がない」
「恥ずかしいよ」
「そんな事、直ぐに忘れさせてやる」
 三城の膝に座ると、彼よりも視線が高くなる。彼を見下ろすというのはなんとも珍しくて、落ち着かない。
 そのうえ下半身は無防備で、自分自身の身体であるとはいえ、視線のやり場に困る。
 このような格好にさせられて、三城はどのようなつもりなのだろうか。
 下半身が、ペニスやアナルが剥き出しである以上、性的な意味合いを想像するが、しかし恭一のそれを慰めたところで三城の疲れが取れるとも思えない。
「春海さん、恥ずかしいよ」
「もっと、恥ずかしがれ」
「そんな……」
「恭一、愛してる」
「あっ」
 三城の指先が、恭一のペニスを撫でる。彼の視線に晒されて僅かばかりに反応をしかけていたそこは、たったそれだけの刺激で強度を増していった。
「春海さん、こんな所で……それに、う、後ろは……」
「黙ってろ、恭一」
「え? あっ……」
 今日の三城はいつもと違っていて。余裕というものが無いように見えて。
 恭一を膝の上に座らせたまま、三城はスラックスのファスナーを下ろすと、その中から既に猛りだした物を取り出した。
「は、春海さん? そのままじゃ汚れちゃうよ」
「着替えるから良い。……恭一」
 ニコリともニヤリとも笑みを浮かべず、三城は片手で強く恭一の腰を引き寄せた。
 そうされると、張り詰めた三城のペニスと恭一のそれが触れ合う。
「ゆっくりと恭一を味わっている時間が無い。だから……よく、顔を見せろ」
「春海さん……恥ずかしいって……そんな」
 咄嗟に三城の首に両手を回す。彼の顔を見ていられなくて視線を落とすと、三城が二つのペニスを纏めて握るところだった。
 空気が纏うばかりだったそこに、彼の熱を感じる。
 竿が、亀頭が擦れ合う様はいやらしく、故に視線が離せない。
「あっ……あっ」
「恭一……恭一っ」
「あっあぁ……春海さんのおちんちんが……あっ……僕の……」
 三城の手が。互いのペニスを一つに握った手が、ゆっくりと、徐々に速度を増して上下に扱かれる。
 それはただ手で扱かれるよりも、ましてや自分自身で行う自慰などとも全く違った快感。
 強く張り詰めるのは、あっという間だ。
「どうした? もう濡れてきたぞ」
「言わないで……はっ……っぁ」
「俺が居ない間、一人で触っていたのか? そういえば、随分セックスもしていなかっただろ」
「して……ない……一人でなんて、してない……」
「どうだか。恭一がそれで我慢出来たのか? 少し擦り併せただけでこんな風になってる好き者だろ」
「してない……だって……一人でしても……よく、ない……」
「良い答えだ」
 ようやく三城が、満足そうに少しだけ笑った。
 無意識に、腰が揺れてしまう。
 三城の亀頭に自分のそれを擦り付けたくて堪らない。
「はっ……あっ……春海さん……もっと……」
「恭一……くっ……」
 抱きつきたいが、そうすると二つのペニスは離れてしまいそうで。
 突き上がる快感に思考は奪われていく。咄嗟の動作で、恭一は三城の頭を抱きしめた。
「春海さん……気持ち、良い」
「あぁ、俺もだ」
「駄目……そんなにしたら……すぐ」
 三城の手が、指が、そしてペニスが。亀頭ばかりを狙うように刺激される。
 張り詰めた堅さと、肉の柔らかさ。恭一の全てを知り尽くしたその手つきは、絶頂に押し上げるには十分だ。
「やめ……はるっ……あっあぁ……」
「本当にオナニーもしていなかったんだな。もうドロドロだ」
「言わな……いで……はっ……あっ……だめ……イッ……イく」
「あぁ、俺もだ。イけ。恭一、俺を感じてイけ」
 どこか嬉しげにも聞こえる三城の声が、耳元で響く。
 身体に力が入らなくなり、まともな思考など薄れていく。
 身体に受ける快感だけが全てのようだ。
「俺も、もう……恭一」
「あっ……あぁ……あっはっ……」
「クッ……きょう、いち」
 三城の手が、二つのペニスを強く握った。それと同時に三城の身体が、腰が、亀頭も震えた。そう恭一の身体が知った瞬間に恭一もまた、三城に腰を打ち付けた。
 身体の内側から熱いものがせり上がる。止める事など出来はしない激しい感覚。
「はっ……」
 次の瞬間、二人の精液は混ざり合い、互いのペニスを塗れさせていた。恭一の太ももも、三城のスラックスも。
「やっぱり……汚れ、ちゃったね」
「構わない」
「あ……」
「恭一も、後で着替えろ」
「……うん」
 三城の手が、腰を支えていた汚れていない手が、恭一の背を強く抱きしめる。彼の胸に倒れ込むと、フッと下半身以外の部分も満たされる。
 ずっと、こうしていない。自然と瞼が落ちてゆく。
「……時間だ」
「……うん」
 けれど、幸福な時間は長くは続かない。
 短すぎる体感時間しかないまま、三城の手は恭一の肩を押した。
 互いの身体は不自然に汚れている。それを目にすると、言葉に出来ない虚しさがどっと押し寄せてきた。


  
*目次*