やっぱり好きな人・編・19



 部屋には煌々と明かりがついたまま、全裸となった三城が再び恭一に覆い被さる。
 太ももに彼の膝が触れ、胸元に唇が落ちる。
 わざとらしくペニス同士を擦り合わされるが、下着に包まれた恭一のそこは刺激を受ける程張り詰めた苦痛が襲う。
 だというのに、眉を顰める恭一を眺め、三城は楽しげに眼差しを細めるばかりだ。
「春海さん、脱がして……」
「まだ履いたばかりだろ?」
「でも……これじゃ、何も出来ないし」
「何もとは何だ?」
「……今日の春海さん、凄く意地悪」
 三城は加虐の趣味が無いと言うが、どうにも信じがたい。恭一の嫌がる姿を楽しんでいるとしか思えない。
 今の三城に、何を言ったところで意味がない、ただ彼が喜ぶだけのような気がした。
「もう、良い」
 手枷で繋がれたままの腕を合わせ、顔を隠す。そうして更に横を向いて、ささやかな抵抗をした。
 少しばかり気分が萎えた。だというのに、心とは裏腹にペニスの張り詰めは衰えない。三城は自身のペニスを下着越しのそこに強く擦りつけるので、意地から来る萎えなどすぐに欲情が勝ってしまう。
 心と身体と下半身がまるでバラバラのようで居心地が悪い。
「なんだ、拗ねたのか?」
「もう良いよ」
「悪かった、恭一。こっちを向け」
 まるで何も悪いなどと思ってもいないように。その恭一の態度すら楽しんでいるかのように。
 強引にではなく、そっと壊れ物でも扱うかのような手つきで、三城は恭一の顔から腕を退けようとした。
 三城はずるい。何をしても、何を言っても、恭一の心がこのような事くらいでは三城から離れる事などないのだと理解しているかのようだ。
「嫌……」
 三城の指先が腕に触れても、しかし恭一は素直には従わない。
 散々意地の悪い事をしたのだ。三城も少しくらいは困れば良い。
「仕方が無いな。ここが、楽になれば顔を見せるか?」
 此処、だと示すように三城はペニス同士を押しつける。
 いくらそうされたところで、革越しの今は圧迫感しか感じない。彼の熱など、伝わらない。
 地味な刺激ばかりでは欲情を高ぶらされるばかりで、物欲しさが募るだけだ。
 顔を隠し横を向きながらも、荒くなる息を納められない恭一は、言葉にする代わりに小さく頷いた。
 脱がしてくれるのだろう。そう思いながら、そろそろと腰を持ち上げる。
 しかし。
「……え?」
 プチプチと、独特の音が小さく聞こえた。それと同時に、通気性が無かった下腹部に、新鮮な空気を感じる。それはペニスや睾丸だけではなく、後ろのアナルまでもだ。
「ほら、楽になっただろ。こっちを向け」
「……なに?」
 腕を退け、首を上げる。そうして三城が太ももを撫でる下腹部を見ると、彼のペニスと触れ合うように恭一のペニスが姿を見せていた。
 下着は脱いでいない。
 腰には布地が残されたまま。
 ただ、その中央がポッカリと空き、ペニスを露わにさせている。
「ここだけ外せる構造でな。気づいてなかったのか?」
「そんな……知らない」
「これで、色々出来るな」
 色々、にアクセントを置き、三城が笑みを浮かべる。
 その眼差しも、口元も、声音も。どれをとってもやはり、意地の悪さしか感じられなかった。
 それでも。ようやく触れ合えた互いのペニスが。
 彼の熱を感じて嬉しいのだと、心以上に身体が喜び、亀頭から透明な蜜を滴らせた。
「いやらしい格好だ。隠したいのか見せたいのか解らん」
「……春海さんがしたんだろ」
「そうだったな。ほら、足を上げろ」
「……あっ」
 恭一の足の間に膝を突き、三城が太ももに手を掛け持ち上げる。
 彼の眼下に晒されたアナルは、無意識にキュッと窄(すぼ)まった。
「此処は、随分と久しぶりだな」
「……うん」
「恭一を放っておいたからな。今日は丁寧に解してやらないと」
「良いよ、それより……春海さんが、欲しいんだ」
「可愛い事を言う」
「……お願い、早く」
 意地を張っていても。意地の悪い三城に反発したくても。
 それでも、身体が知っているから。
 三城に与えられるものの快感を教え込まれたアナルは、もうどうしようもないまでに我慢が出来なくなる。
 ここに、三城のペニスが欲しいのだと、そうして、いつものように快楽だけを与えて欲しいのだと。
 今の自分の格好がどれだけ羞恥的であるのかなどどうでも良くなり、恭一は自ら腰を持ち上げた。
「春海さん……早く」
「良い子だ」
 両腕を頭上に上げ、真っ直ぐに三城を眺める。
 やはりどこか楽しげな様子の三城は、手にしたボトルからローションを垂らすと、それを纏わせた指先を恭一のアナルへと宛がったのだった。


*目次*