嫁で息子で・編・10



既にセッティングをされていた布団は当然のようにシングルが二つであったが、十分な距離を空け敷かれていたそれを真横に合わせる。

二つが繋がった広さの布団へ恭一を寝かせると、三城は言葉少ないままその身体に多い被さった。

恭一が膝を立てると浴衣の合わせは簡単に肌蹴、露わとなった素足を自身の足と絡ませる。

恭一の足は細く白く体毛も少ないが男性的で、太股までめくれ上がったそこから手を滑り込ませると、三城は下着に包まれた恭一のペニスを手のひらで包み込んだ。

「んっ・・・春海さん」

「恭一、いやらしい」

下着の下、まだ平素の姿であった恭一のそこは、けれど三城が握りしめた事で直ぐに質量を増させていった。

それが嬉しく、三城はその中へ手を滑り込ませると直接それを握る。

手の中にしっくりと納まる熱は、まるで恭一の感情の高ぶりに触れた気分だ。

「あっ・・・」

「可愛いな。恭一も、こっちも」

「春海さん、言わないでよ、そういう事・・・んっ」

恭一の反応が可愛くて。

三城は握りしめたまま指先で亀頭へ刺激を送った。

細身で片手で握り込める大きさのそれは形を変えた後も薄い色で、どうやらこちらを使用した経験はないらしい。

ペニスを握ったまま、三城は恭一の頭を抱くように身体を密着させた。

「どうして欲しい?」

「どうって・・・」

「今日は恭一の好きなようにしてやる。誕生日だからな」

「そんな事言われても・・・」

「あるだろ、どんな風に触って、どんな風に愛されたいのか、言ってみろ」

「はっ恥ずかしいよ」

反対へ顔を背ける恭一の耳が、赤く染まっていたのは数時間も前に飲んでいたアルコールのせいだけではないだろう。

けれど尚もペニスを弄び続ける三城に恭一は拒否を見せる事はなく、鼻から抜ける声を細く漏らしながらもじっとしている。

快感の反発心の狭間で揺れているのかも知れない。

布団に肘を付き恭一を見下ろす三城は、その恭一の姿に目を細め尚もペニスを弄るばかりだ。

「・・・春海さんの意地悪」

「何を言う。誕生日プレゼントの一つだ」

「・・・急に言われても、思いつかないよ・・・春海さんがしてくれるのは、大体が、その・・・」

「その?」

笑みを崩すことなく先を促すその言葉こそが『意地悪』であるとも三城は理解しているが、恭一の反応が可愛くてつい止められない。

そして恭一もまた、三城がこうなってしまえば折れないと知っているのか観念したように小さく呟いた。

「・・・良いから。春海さんがしてくれるのは、どれも良いから、だから・・・」

「はやり、可愛い事を言ってくれる。だが、今日は是非恭一のリクエストを聞きたかったものだ」

「・・・ん」

「恭一がどうして欲しいのか解らなければ、俺も動きようがない」

「っ・・・やっぱり、意地悪」

返答を待つ間休まず弄んでいたそこから手を引くと、三城は恭一の横へ肘を付いて横たわる。

いけしゃあしゃあと言ってのけた三城は今はもうどこにも触れていない状態で、恭一の反応を楽しむように見下ろすと、眼下の彼は眉を下げていた。

不満そうな、困ったような、けれど抑えられない熱情を宿しているような。

『嘘つき』と言わんばかりの面持ちで足元だけ浴衣を盛大に肌蹴させた恭一は、三城に顔を向けたまま視線だけを反らせた。

「・・・、キスして。それから、抱きしめて・・・えっと・・・春海さんのが、欲しい」

「もっと細かく言ってくれても良かったんだがな。それならいつも言わせてるのと一緒だろ」

「・・・そんな事言ったって・・・あ、解った」

不満、というよりもいっそ不機嫌にも思えるまでに眉間に皺を寄せ掛けた恭一であったが、何かを思いついたようにパッと顔を明るくさせた。

その表情も三城には愛しくて仕方がなかったが、隠微なこの空間には似つかわしくないようにも思える。

一体何が『解った』のか、三城は促しながら恭一の髪を撫でた。

「なんだ?」

「『春海さんのお勧め』」

「なんだそれは」

「『お任せします』」

「・・・結局それか」

誤魔化すように笑ってみせる恭一に、三城は呆れたようにため息を吐く。

リクエストを訊くと言っているというのに、そんなものはリクエストでも何でもないではないか。

「後悔するなよ?『俺、お勧めスペシャル』」

だが、言葉とは裏腹に三城はこれでもかという満足感を得ていた。

リクエストが己の『お勧め』だというだなんて、愛しいや可愛いといった言葉以外出て来ないではないか。

フッと笑みを浮かべた三城は、枕元に用意をしておいた愛用の潤滑ジェルを手に取った。

「スペシャルとまでは言ってないっ・・・え?春海さん、いきなり?」

「お勧めが良いんだろ?これが俺のお勧めだ」

「え?あっ・・・・ンッ」

下着を下ろさせ恭一の唇を奪う。

そうしながら、潤滑ジェルの纏わせた指は早々に恭一の後孔を撫で回した。

三城のお勧めは、自分自身でしかない。

「存分に楽しませてやる」

「あっ・・・春海さん・・・まっ待って・・・あっ・・・ン」

その後、素直に正確なリクエストをしなかった事を恭一が後悔するのは、間もなくであった。


  
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