夜の太陽・昼の月・1


近藤彰正【こんどう・あきまさ】は自身が統括する歓楽街を見回っていたのだが、ふとした気まぐれで、歓楽街がら一筋それた場所にある公園に向かった。

時刻は深夜手前の23時。

歓楽街が一番活気付いている時刻でもあった。

近藤はこの一体を仕切る暴力団・佐原組【さはら・くみ】の若き組長である。

佐原組は関東一円を統括する組織の2次団体だが、29歳という若さで組長の地位に上り詰めた近藤は系列1次の幹部にもなるのではないかと言われている出世頭だった。

近藤にはそれだけの実力手腕と力、それにカリスマ性も備えているが、それだけではない。

見るからに「その筋の人」と思われる厳つい強面だが、よく見れば見るほど酷く整った面持ちをしているのが解る。

鋭い眼差しに眉間に寄せられた皺、硬く結ばれた唇からは意思の強さが伺えた。

身長は190cm近くあり、鍛え上げられた筋肉を纏っていてガタイもとても良い。

そんな近藤がその公園に訪れたのは、全く極偶然だ。

護衛の部下を置いて来たのには意味はない。

それもまた、ただの気まぐれだったのだろう。

都会の真ん中にあるその公園は、散歩道が数通りありベンチが置かれているだけで、遊具などは一切無い。

大人のカップルが訪れる「そういった趣の」公園である事もまた有名だ。

だが相手にも金や場所にも困った事の無い近藤には無縁の場所だった。

正直このような場所に来たのは初めてだ。

ふらりと足を踏み入れた近藤に頭を下げる若者が何人か居た。

顔に見覚えのある者は居ないが、組員かもっと格下のチンピラだろう。

近藤は気にする事無く奥へと進んだ。

援助交際目的の若い女や、それを買おうとしている中年男性、木の陰で行為に耽っているカップル。

そんな中、一つのベンチが近藤の目に飛び込んできた。

街灯の下にある古びたベンチに座るのは、到底ここには不釣合いではないかと思われる白皙の美少年だ。

近藤の足は思わず止まった。

綺麗や可愛いだけの少年なら何人も知っていたが、その少年は違う風に映ったのだ。

もっと儚げで、純粋そうで。

穢れを知らないだろう、正に天使を連想させる印象だった。

そんな少年が、なぜこんな謂れのある公園に居るのだろう。

待ち合わせだろうか。

それとも知らずに迷い込んだのだろうか。

だとすれば、危ない目に合う前に帰らせるべきだ。

注意を促してやろうと、めったにしない節介をするため近藤が歩き出した瞬間、その少年の「待ち合わせ」相手が現れた。

何処にでも居るような、よれたスーツの男が少年の前に立つ。

少年は無垢な笑みを浮かべると、相手が差し出した3万円を受け取り立ち上がったのだった。



 
*夜の太陽・昼の月・TOP*