夜の太陽・昼の月・10


「、、、琥珀、起きていたのか」

玄関からリビングへ向かう途中に琥珀は立っていた。

佐伯との会話を聞かれていたかもしれない。

予想外の出来事に、近藤は動揺を隠せなかった。

「、、、彰さん、今の話し、本当ですか?」

やはり聞いていたか。

近藤は決意を決め、息を吐くとしっかりと頷いた。

「本当だ。」

「、、、そうですか」

琥珀は、コクンと頷くと小さく呟き、何かを考えるように黙った。

沈黙が二人を襲う。

暫くして口を開いたのは琥珀の方だった。

「ありがとう、ございます」

右足に体重をかけて立つと、深々と頭を下げた。

「でも、、、帰る所なくなっちゃった」

琥珀は頭を下げたまま、泣きそうな声で呟いた。

「ここに居たらいいだろ。お前に不自由はさせない。もちろん殴ったりなんてしない。愛してるんだ」

近藤は琥珀の肩を掴むと、無理矢理身体を引き寄せ抱きしめた。

「あ、、、」

バランスを崩した琥珀は、一人で立っている事も叶わず、近藤にもたれかかる。

「でも、、彰さん、、でも、、」

「お前が嫌だと言うなら無理にとは言わない。その時は、、、」

「嫌なんかじゃないですっ。でも、そんな事今まで一度も、、、」

「言える訳ないだろ?俺はヤクザだぞ?」

「、、、へ?だから、何ですか?」

勢いついて言った近藤の言葉に、琥珀は心底不思議そうな顔をして見つめた。

「だから、その、」

改めて「何故だ」と聞かれると上手く説明できない。

これでは粋がっている高校生のヤンキーと大差ないのではないだろうか。

全く、琥珀には叶わないな、と近藤の口からため息が漏れた。

「で、どうなんだ?」

近藤は照れ隠しに強い口調で言って見せた。

琥珀を抱きしめる腕もまた、力を込めて。

「はい、喜んで。僕も、彰さんが大好きです」

ニコッと微笑むその顔に、近藤は初めて唇を重ねていた。

   
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