夜の太陽・昼の月・2


近藤はあの少年の事を忘れる事が出来ずにいた。

夜目にも解る綺麗な顔。

現金を受け取りながら見せた笑みもまた、至極可愛らしいものだった。

自分でもどうかしている、と思いながらも翌日、昨日よりも少し早い時間にあの公園のあの場所に向かっていた。

少年が居る保障などない。

それは十分に解っていたのだが、近藤には「止める」という選択肢はなかった。

「、、、」

近藤の危惧をよそに、果たしてその少年は昨日と同じベンチに座っていた。

近藤はゆっくりとした足取りで歩み寄る。

自分がヤクザ者で、見た目にもそれが表れている事をしっかりと理解している。

それだけに、へたな言葉で声をかければ警戒されるだろう。

「、、、」

最初の言葉を考えながら近づくと、少年は近藤に気がついたのか、その零れんばかりの大きな瞳をこちらへと向けた。

顔に恐怖の色は浮んではおらず、ただじっと近藤を見つめている。

少年の目の前に立った近藤は、出来るだけ睨まないようにと心がけながらその瞳を受けた。

その時気づいたのだ。

少年の左の瞳は、近藤を捕らえてはいない事に。

右目は真摯に近藤を見上げているのに、左目は白目をむくかのように不自然に左上に偏っている。

盲目者特有のそれを近藤は何度か見た事があり、すぐに解った。

端正な、非常に整っている少年の面持ちに、飛び跳ねた眼球だけが酷く奇妙だ。

だが少年がニコリと微笑むと、そんな事が気にならないほどに可愛らしい。

年齢は15〜6歳だろうか。

近藤に怯えないところが逆に場数を見せ付けられたかのようで、胸がチクリと痛んだ。

「、、、、一晩いくらだ?」

「へたな言葉」どころか実も蓋も無いセリフを口にした近藤に対し、少年は指を3本立てて見せる。

「初めての人は怖いから本当はもう少し頂くんですが、、貴方は優しそうだから。」

照れたような表情を見せ、小首を傾げながら口を開いた少年の声は見た目と同じくとても可愛らしかったが、発せられた言葉は近藤の予想を裏切るものだった。


   
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