夜の太陽・昼の月・4


琥珀の性交は、良く言うと「奉仕的」、悪く言うと「事務的」だった。

売春と言うよりも「援助交際」という軽い言葉が似合いの、ただ身体を相手に貸すだけで自分からは何もしようとしない若い女が多い中で、琥珀のそれは高級ソープや昔の遊郭を思わせるほどのサービスだった。

献身的で丁寧で、全て自分から動く。

不自由な足を引き摺りながらも懸命に奉仕する様は、痛々しくすら思える。

近藤は自分の下肢部に傅く琥珀を見ても尚、初めて琥珀を見た時に感じた「純潔さ」を視ていた。

「気持ちいいですか?」

琥珀は時折近藤を見つめて聞いた。

「あぁ、気持ちいいよ」

そう答えると琥珀は心底嬉しそうな顔をする。

「どうしてこんな事をしている?」と、喉元まででかかった言葉を近藤は何度も飲み込んだ。

そんな事を聞くのはタブーだ。

聞いた所で自分が満足する答えが返って来るとも限らない。

琥珀は後孔を解すのも自分ですると、近藤の上へと跨った。

常人とは違う動きで腰を振るのは足のせいだろうか。

それがまた快感を生むのだが、近藤はそれ以上に琥珀の顔から目を離せないでいた。

自分の快感よりも相手の快感だけを優先させた、正に「仕事」と言って良い行為。

真面目なまでに必死な姿を視ていると保護欲を刺激される事を、琥珀は知っているのだろうか。

演技なのだろうか、といぶかしむほどに喘いで達した琥珀から、同じく達したばかりの自身を引き抜くと近藤はベッドから降りた。

疲れを感じさせない動きで歩き、スーツのジャケットから煙草を取り出すと、一本を咥えて火を点ける。

行為の後にすぐ喫煙するのは失礼だと思うのだが、今はそうでもして琥珀から目を逸らしたかったのだ。

かれこれ2時間以上は経っているというのに、同じ場所に入れていた携帯はまだ振るえ続けている。

そろそろ限界だな、と思うと近藤は胸の隠しから名刺ケースを取り出し、一枚を琥珀に渡した。

「これを渡しておく。」

「、、、、っ!」

両手で名刺を受け取った琥珀は、暫くそれを眺めていたがすぐさま顔を上げ、近藤をマジマジと見つめた。

「怖いか?」

近藤がクスリと笑う。

それを遮るように、琥珀はブンブンと首を振った。

「怖くなんてないです。ただ、ビックリして。組長さんだったんですね」

「あぁ」

「組長さんってお呼びしていいですか?」

「止めろ。萎える」

「えっと、、、近藤さん?」

「それもな、、、」

なんとなく、萎える。

「じゃぁ、、、彰正さん、、、彰さん!」

そう言った琥珀の瞳がキラキラと輝いている錯覚に陥った。

やはり可愛い。

胸の鼓動がドクリと一度大きく鳴った。

「ダメですか?」

「いや、、、いい」

思春期の若造でもあるまいのに、近藤は酷く照れくさかった。

誤魔化すように煙を吸い込むと、琥珀から顔を逸らして吐き出す。

「そう呼ぶのはお前だけだから」

だから何だ、という訳でもないのだが、近藤はそう言うと琥珀の髪をクシャリと撫でた。

   
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