三城×幸田・新春湯煙殺人事件・編・12



またやられた。

三城に流されない、と決めたばかりだというのに、また流されてしまったのだ。

気が付くと時刻は夜明け前。

幸田はだるい体をのそりと持ち上げた。

全裸の身体は布団に包まれていたのだが、隣に三城の姿はない。

「はぁ、、、何やってんだか」

幸田は一人ため息を吐いて立ち上がり、布団の傍らに無残に脱ぎ捨てられていた浴衣を手に取った。

「、、、、」

その浴衣は一瞬息を飲むほどにクシャクシャで、「何か」があったとしか思えない。

「男二人連れで、何かって、、、プロレスとか?」

中学生じゃあるまいし、ありえない。

苦笑と失笑を織り交ぜたような笑みを浮かべながらも、幸田は仕方が無くそれを着た。

替えの浴衣があればいいのだが、きっと部屋には無いだろう。

頼めば替えてくれるだろうが、出立までそう時間も無いから、浴衣の経由についていぶかしまれるよりも我慢した方がいい。

ため息を吐いて襖を開けたが、座卓のある部屋にも三城の姿は無かった。

だが、座卓の上に握りつぶされたタバコのソフトケースがある事に気づき、幸田は納得した。

タバコを買いに行ったのだろう。

今日はやけに三城のタバコの本数が多い気がする。

何か気がかりな事でもあるのだろうか、と首を捻って考えて見てもまるで思い当たらなかった。

仕事の事かも知れない。

今日だって何度かPCを開いていたし、それならば幸田の干与する事ではないだろう。

せめて苛立たせないように大人しくするのが得策だ。

そういえば、先ほどの行為もその前の行為もやけに激しかったな、と思うとカッと顔が熱くなった。

「何を考えているんだ僕は」

考えを追い払うかのように首を振った幸田は、備え付けの冷蔵庫を開けた。

だが、中には缶チューハイが数本入っているだけだ。

「今からアルコールはなぁ、、、」

仕方が無い、買いに行くか。

高級旅館に自販機とは不釣合いな気もするが、このご時世きっとあるだろう。

そこで三城に会えるかもしれない。

そうだ、そのまま夜明けの庭を二人で散歩するのもいい。

今なら人も少ないだろうから、少しくらいなら手を繋いだり出来るかもしれない。

幸田は楽しげな想像に頬をほころばせ、財布だけ手にすると部屋を出て行った。


 
*目次*