三城×幸田・新春湯煙殺人事件・編・21



「三城さんを、脅してなんかいませんかねぇ」

「、、、は?」

緊張しながら待った福田の何気ない呑気な、だが決め付けたような言葉に、幸田は絶句するしかなかった。

誰が誰を脅迫するって?

自分があの三城を脅迫など出来るはずがないだろう。

そんな事をすれば、逆に比べ物にならないほどの何かで脅迫し返されそうだ。

反論の言葉すら直ぐに口に出来ない幸田は、ただ阿呆のように口を開閉させるばかりだった。

ようやく衝撃が落ち着いて来ると次に訪れたのは安堵だ。

疑われた「関係」が本来の二人の「関係」でなくてよかった。

幸田は無意識のうちにため息を吐いていたらしく、福田はそんな幸田をギロリと睨み付ける。

「違うんですか?」

「違いますよ、僕はそんな事してません」

立ち上がらんばかりの勢いで幸田は声を荒げた。

「だったら、どうしてこんな高級品ばかり貰ってるんですかねぇ?」

手にした書類をぺラリと捲り、福田はねちっこい目つきで幸田を見る。

それを言われると言葉に詰るのだ。

正直に言ってしまおうか。

自分たちは恋人関係にあるからだと。

だが、そんな事をバカ正直に言っても何処まで信じてもらえるだろう。

勘違いでなければ(ほぼ確実に)自分は澤野の殺害を疑われている。

そんな時に、「僕たちは男同士だが付き合っている」と言っても、「愛だの恋だのと言って三城を利用した」と言われかねない。

八方塞がり。

そんな言葉が幸田の頭に過ぎる。

自分の言葉を何も信じてもらえないような気にすらなってきた。

もしも、この状況におかれたのが三城ならば、すぐさま窮地を脱するのだろう。

泣きそうになる心境の中幸田は、眼光鋭い男達の中で、その誰にも負ける事の無い、鋭くも優しい目をした最愛の恋人の顔を思い描いた。



 
*目次*