三城×幸田・新春湯煙殺人事件・編・33
(エピローグ)


──俺は一度だけ、新宿二丁目で幸田恭一を見た。

あれは、4年、、、5年ほど前だろうか。

幸田が予備校に入って来て、半年ほど経った時だと思う。

初めて見た時からやたらと綺麗な男だと思っていたのだが、その幸田が二丁目のバーから出てきた時は「まさか」と驚愕し、同時に大きな喜びも得た。

幸田もゲイなのだろう。

だったら、自分の想いを伝えても良いかもしれない。

けれど俺は逡巡を繰り返し、躊躇い、声をかけようとしても口から出るのは意地の悪い言葉ばかりだった。

好きだというのに、きっと俺は幸田を嫌っていると思われているだろう。

俺が何をしても幸田は笑って流していたが、周りの教師をみていればわかる。

苦しかった。

自分の気持ちを閉じ込めたままの生活が。

そんな時、和馬に出会った。

俺は和馬と出会い、あれほど恋焦がれていた幸田を忘れる事が出来た。

幸田に対して押さえていた想いが爆発したかのように、俺は和馬を過剰に求めてしまった。

もしも、幸田に想いを告げていたならば俺の人生はどうなっていただろうか。

いや、何も変わらないかも知れない。

幸田はあの男を選び、俺もいずれは和馬の元へ行っていたのだろう。

俺は和馬を愛した事を、そして「一緒に行こう」と誘った事を死して尚、後悔していない。


【完】


*あとがき*
*目次*